廃村・廃校、そして砂利道。

和歌山南部の山奥を満喫したサイクリング、その記録。

 


出発前夜 JARI不調

出発前夜、何気なくJARIの油圧STIレバーに手をかけたところ、スカッ…と間の抜けた手応え。

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前日触ったときはなんの問題もなかったのに、思いっきりエアを噛んでいた…

出発準備で時間に追われる中エア抜きに挑戦するがどうにもうまくいかず早々に匙を投げる。

 

さて、困った。

今回のルートは確実に未舗装路や担ぎが含まれるが、残るマディフォックスはちょっとした実験中でバラバラ状態。

お借りしていたネオスポルティーフもフカヤさんの元へお返しした今、使える得物はエクタープロトンかDEFY、いずれにしてもただのロードバイクしか無い。

一瞬脳裏で「和歌山は諦めてどこか走りやすい近場で…」と腑抜けた理性の声がしたが、身体は勝手にエクタープロトンを掴み車載キャリアに積み込んだ。

 

出発

早朝、自宅を出発。

近畿自動車道紀勢線を飛ばして現在の南端、すさみ南ICまで3時間弱。長きにわたる増進の末、4年後にはついに串本まで到達するようだ。

 

最初で最後の補給地点、すさみのローソンで一日分の水と食料を買い込む。

この先食料を買える場所は「絶対に無い」と断言できる。和歌山とはそういう場所だ。それでいい、それがいい。

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天気は快晴。

走り出し、暖かな風を身体に受けて確信する。間違いない、春が来た。

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海も綺麗だが今日は山。

ふうっ…と息を吐いて、気を整える。さあ行くぞ。

 

The road is (not) paved.

海辺から集落を抜けて山にとっつきほんの数100m、道はこうなる。

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あぁ、これだ。こんな道に来たかった。

背中がじんわり熱くしびれるような幸福感に包まれる。

 

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ときに舗装が消えたって、何も驚くことは無い。それが和歌山。

 

 

かと思えばこんな光景も。

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"Paving the way for invasion."

昨日のトップニュースで読んだフレーズを思い出す。
それは統一か、侵略か。

 

 

廃校(其の一)

最初の小さな峠を越えた先でさっそく廃校のお出ましだ。

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いい。

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全くの手つかずで荒れ果てている。

今日明日走る道すがら至るところにこんな廃屋がごろごろしている。

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旧校舎の向かいには新校舎が…と思ったが、

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こことて50年前に閉校となっていた。

開校は明治十二年…てことはさっきの校舎築143年か…!

 

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どれだけ走っても車一台やってこない。道も景色も差す陽も影も、全部を独り占め。

 

はい。

 

林道へ

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大きく開けた市鹿野の集落を越え、上露・大瀬の方面へと林道をゆく。

 

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空が明るくなった。

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踏み固められたダブルトラック。作業林道だろうか。

事前に見た地形図ではこのあたりから面白そうな道が麓の貯水池まで続いていたので、ちょっと覗きに行ってみると…

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突然ダイナミックな光景が開ける。

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当然走れないので、担ぐ。

ロードバイクもグラベルバイクも、担いでしまえばみな同じ。

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ただの森林伐採ではなく、人の手が及ばず無秩序に増殖を初めた人工の杉林に水源涵養のためにリセットをかけているようだ。

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日本の森林のおよそ4割は人工林。

高度経済成長期、明るい自然な広葉樹林をスギやヒノキの針葉樹で暗く塗りつぶしていったツケが今、花粉症やリアディレイラーへの攻撃として我々を苦しめている


 

Today’s Rig

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ここで一息、今回の装備。

オーダーから早4年目に突入するエクタープロトン。

担ぎの時はこれまたオーダー一点物なWonderlustのフレームバッグの後ろ側を外して肩を入れる。ホリゾンタルで前三角が大きいのでボトルケージを付けたままでも担ぎやすい。

タイヤは終売時の投げ売りで買い溜めしていたコンチ 4000sⅡ 25cのラストストック。

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その後も引き続き林道を進む。

舗装はされているが、斜面から流れ出た砂利や苔や杉枝などの障害物多数。求められる路面状況へのケアはグラベルとそう大差ない。

 

廃校(其の二)

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そんな林道からさらに伸びる脇道。

そこには、

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あえて多くは語るまい。

歪な12辺の内側で軋む床に胡座をかいて、しばし静寂に沈んだ。

 

未舗装林道の峠越え

一つの分岐に差し掛かる。左に行けばこのまま舗装路で海まで帰れる。

右に行けば…

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ふむ。

 

実はロードでの出走が決まった直後、舗装路から海へ下るルートを引き直してはいた。

というのもこの道は10km先の峠まで、ツーリングマップルにまで記載のある正真正銘の未舗装路なのだから。

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時間もそれほど余裕は無いし、万が一走行不能なメカトラブルにでもなれば日の暮れた山道をひとり歩くハメになる。夜の和歌山の恐ろしさは嫌というほど知っている。

もうここまでで存分に堪能したし、わざわざ無茶をする必要もない。

行かない理由なら山ほどある。

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そんなことを頭の端で考えながら、気づけばズリズリ砂利道を登っていた。

なだらかな川沿いをのんびりと。漕げば進む。ロードもグラベルも変わらない。

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一部の決戦用軽量タイヤを除けば、ロードタイヤでも外周部には耐パンク用のケーシングが施されているのでこの程度の砂利道を真っ直ぐ走る分にはそれほど問題は無い。 

恐ろしいのはサイドカット。触ればわかるが側面はペラッペラなので鋭利な岩を斜めにハスれば一発でお釈迦。ツールケースにはタイヤブートの用意もあるが、あまりに大きな裂傷ではチューブの保持がままならない。

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またリム打ちも問題だ。太めのタイヤなら空気圧を落としてトラクションを確保するが、そもそもエアの絶対量が少ないロードタイヤでそんなことをすれば即ただでさえ軽いリムが簡単に曲がる。

いずれにしても、この状況下で復帰不可能なメカトラに陥れば発狂必至の深夜単独行軍が待っている。

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わかっちゃいる。

わかっちゃいるが、いざ目の前にこの道敷かれて行かないサイクリストがどこにいる。

 

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急斜度の斜面を切り返して一気に標高を上げる。前後の荷重分配を間違えると即タイヤがから回る。丁寧に丁寧にペダルを回す。これはこれで面白い。

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ギアも足りない。一息つくため立ち止まる。

今来た道を見下ろしながら、サイクリング部時代の合宿を思い出す。下を走る仲間に向けてエールのHoooo!!! がお決まりだった。

 

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「行きたいところへ行く」が自分にとってのサイクリングの本質だ。

最適なジオメトリー、太いタイヤ、ディスクブレーキ。あるに越したことはないが、なくても道の選択肢が減るわけじゃない。

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細いタイヤのロードバイクでここまで無事に来れたからこその感動を堪能しながら、ゆっくりゆっくり進む砂利道。最高だった。

 

 

祓走:海へ

砂利道の峠を登りきった先は、荒れ果ててはいるがかろうじて舗装が復活していた。

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下りは流石に乗れないかと覚悟していたので助かった。とはいえ路面はこの有様。ゆっくりゆっくり。

 

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途中いくつかの集落を抜けながら、時に寄り道をはさみながら海へと下っていく。

 

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なんとか日が暮れるまでに海沿いの国道まで帰ってくることができた。

沈む夕日と水平線を眺めながらこの日のサイクリングを反芻する。

素晴らしいサイクリングだった。

 

おしまい