【闇砂利】京の暗黒グラベルをゆくオールナイトライド

サイクリング

モリビト&しみみーと行く恒例の夜通しサイクリング、3年ぶりとなる今年は禁断の夜の砂利道へ。






 

集合は18時、さくらであい館。

しみみー、モリビト、やくも。5年前の和歌山最奥デスライドに端を発するこのメンツでのサイクリングは、日が傾いてからのスタートが恒例だ。

「いやー…怖いなぁ…」



京都市内まで川沿いを北上。


幸先のいい追風に押されて、あるいは誘き寄せられるように、あっという間に市街地を抜ける。

御薗橋の王将で最後の晩餐

「餃子うまぁ……怖ぁ…」「怖いなぁ…」



 

近くのスーパーで最初で最後の食購。

「始まるなぁ…怖…」



 


しみみーとおれが当たり前のように繰り出すのは、カロリー対スペース比を向上させるサイクリング部相伝の技「薄皮むぎゅう」。ほんとはあんこが良かったんだけど、クリームパンしかなかったんよ。

 




 

未だへばりつくような暑さに辟易しながら鞍馬方面へと走る。

途中、二ノ瀬トンネルと旧道の合流地点、おれは先頭で何事もなく走りすぎたのだが、後ろの二人がなにやら不穏なやり取りをしている。

え?なんて?いま??路上に?おっさんが寝てた?どこで??今通ったとこ??は???おれはそんなの見てないが???

 

「なんならやくもさんが1番近く通ってましたよ。踏みそうなくらい。」

 

なにそれしらんこわ。

 

…まあ夏やし、夜やし、そういうこともあるやろ。




 


いよいよ街灯もなくなり、おなじみの花脊峠が始まる。

 

それにしても暑い。湿度が高くて汗が乾かず、皮膚にべっとりとまとわりついて放熱を妨げる。夜の山でさえこの不快度、夏の京に逃げ場はない。いよいよ人の住むところじゃねえな。


峠手前の展望スポットから市街の明かりに別れを告げる。次見る街明かりは小浜だ。


峠に到着。すでにだいぶしんどい。

モリビトはBOKEN G-CLAW 50cの舗装路の重さに悪態を吐き続けていた。

 

峠の路上に寝そべってしばし体力と気力を回復。今日に限っては辛い花脊が前座も前座。ここからが本番、闇砂利行軍の始まりだ。

 





初めは緩やかな尾根筋。

前照灯にはVOLT800&800Neoの2灯に加えてGENTOSのヘッデンをメットに装着。



 

登り返しのガレ場に差し掛かるとモリビトのD-309が不調。どうやらシートポストの櫓が緩く、サドルがお辞儀したらしい。



夜の山中に現れた尋常ならざるに光源に興味津々の虫たちに囃し立てられながらの調整。

櫓のボルトがスムーズに動かず少々苦戦したが無事続行。


もう何度目かもわからない第三帝国Route 1。ガレとヌタとフラットが混在する序盤の尾根筋はナイトグラベルの肩慣らしにはもってこいだ。

 

尾根筋をしばらく走った先、お馴染みの切り通しまでくるといよいよ腹の括りどき。ここから麓の集落までが、数多のタイヤやリムを屠ってきたOMON地獄のメインディッシュだ。

 

ここから先は、言葉で伝えられるような事はない。

日中でさえ、5人でくれば誰か1人はチャリか身体のどこかが壊れる掛け値なしの激ヤバコースに夜中に突っ込む、これはもう理性の範疇では恐怖以外になにもないのだから。

だけど、もちろん楽しい。悪魔的に楽しい。

一寸先の闇に浮かぶ砂利の凹凸に目を凝らしながら無限に続く運試し。技術や経験よりも日頃の行いが圧倒的にものを言う世界。そんなガレ道を3人ではしゃいで下ってノーパンクってんだから、こんなに自己肯定感のアガるアクティビティったらねえぜ。

 




大見の集落からすぐに次の山へと入る。

林道の入り口にはちょうどいいキャビンがあるので大休憩。


明かりを消すと、直後は完全な暗黒。自分の手の影すら見えない。

そのまま横になってのんびり駄弁りながら暗闇を見ていると、なんと7月も末に差し掛かろうという時期に蛍が見えた。それも一匹や二匹ではなく何匹も、直ぐ側の小川の辺ではなく杉の木の合間を飛び回っている。

まさかこんな時期に蛍に出会えるとは。そういえば3年前に同じくこのメンツで姫路から城崎温泉まで夜通し走った際も途中の水場で蛍を見たな。

 




 

ここからもう一つ峠をグラベルで越える。こちらはガレ度が比較的マシなため、調子にもスピードに乗って軽快に下る。



ここが一番撮れ高良かったはずなのに、間違えてタイムラプスで撮っちゃってた。畜生。

 




久多の集落に降りると小浜までで唯一となる自販機があるため立ち寄って水分補給し、オンロードでおにゅう峠を目指す。


ここの舗装路が唯一のんびり退屈な眠気を誘うイージールートかと思っていたのだが、とんでもない数の伏兵が潜んでいた。鹿だ。

おびただしい数の鹿たちが道の右から左から唐突かつ不用意に飛び出してくるので、こちらにぶつかられやしないかとヒヤヒヤでたまったもんじゃない。

そうでなくても鹿とは因縁浅からぬ三人だ。獣たちへの敵意の高さはそこらのサイクリストの比ではない。

「のけよー!!!!」「通るぞー!!!」

と、ここまでも散々繰り返し叫んできたが、いよいよ路肩からこちらを怪訝そうに伺う鹿の顔でも見えようもんならガサ入れ中の大阪府警も真っ青な怒声が夜闇を劈く事となる。

果たして鹿たちは恐れおののき、あるものは足を滑らせ

\\ジャッボーン!!//

と小気味の良い音を立てて横の小川に落ちたものまでいた。やるかやられるかだ、悪く思うなよ。

 




20kmほど絶叫しながら北上し、おにゅう峠の麓までやってきた。

海から登れば辟易するほどの峠も、こちら側からなら標高にしておよそ300mほど。急ぐこともないのでのんびり越える。


途中一箇所崩落があったが、自転車なら問題なく乗り越えられる程度。むしろ車の通行を防いでくれてありがたい限りだ。


こうしておにゅう峠に到着。

時刻は午前3時。峠から向こうには小浜の街明かりが見える。

ようやく肌に冷たく感じる風を気持ちよく浴びながら、脱げるものは全部脱いでアスファルトに寝転んで見上げた空には満天の星。


iPhoneの3秒露光じゃこれが限界だが、天の川の光の帯まではっきりと見え、流れ星が次々に視界のあちこちに線を引く。

気の合う仲間と夜通し走って、夜明け前の峠の上で涼しい風を一糸まとわぬ全身に浴びながら眺める星空、この上なく幸せな瞬間だった。




 

小浜の街に降りた頃には空は白みだし、24時間営業のすき家にピットイン。


腹ごしらえしてさあこれからどうするか。一晩走った汗だくの泥まみれの身体を朝風呂で流したいが、近くの風呂が開くのは朝10時。

走り足りないということはないけど、時間もあるのでもう一本、絶景の展望台から海でも拝みに言ってやるかと若狭基幹林道へと向かう。


この最後の一山がキツかった… すぐそこの日本海までを隔てる山の尾根筋までの急登をヒイコラ言いながら登りきり、展望台へと到着。


いい景色。ねむい。日が昇ると眠くなる。

風呂が開くまでまだ時間はあるし、街に降りても暑いだけですることもないので、ここでしばしの仮眠タイム。徐々に登る朝日を木々や小屋で遮りながら地べたに寝そべりおやすやぁ…(ここでめちゃくちゃアリに噛まれて、一週間たった今もまだ痒い)




 

その後はアップダウンの基幹林道から、最後は三方に向けて下ったが、この道がまたなかなかにハードな廃道気味のグラベルで面白かった。面白かったが、とにかく風呂に入りたい一心で細かな倒木を踏み越え下った。


山を降りると日も高く、明るい田園風景の中を温泉に向けて走る。

 

途中、用水を組み上げて使う共用の農機具の洗い場があったので、乗り手を差し置いた愛車の行水に使わせてもらうことに。


京の泥を若狭に落とす。


絵になる男、モリビト。

 

こうして三方の町にたどり着き、開店と同時に温泉へとなだれ込みひとっ風呂浴びて輪行で帰路についた。




 

いやあ、本当に楽しかった。いろいろ書いてみたが、正直あの楽しさの半分も伝えきれない。ろくに写真すら撮ってられないほど本当に楽しいサイクリングだった。

モリビト、しみみー、ありがとな。来年はどこ走ろうか。

 

おしまい

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