自室のデスクトップオーディオ環境をまた一つレベルアップさせてしまった…
自室のデスクトップでの音楽環境をアップグレードしようと考えたときに、サイズや構造など後述する諸々の条件ががちょうどよかったので思い切って導入してみた。
ひとまず2週間ほど使ってみたのでファーストインプレッションをまとめておく。
<追記>
合わせて使ってるTEACの卓上アンプについてはこちらの記事をどうぞ。
これまでデスクトップ環境で使っていたのはSONYのコンパクトオーディオシステムCAS-1。これがまた出来が良かった。
USB-DAC付きのデジタルアンプと超コンパクトなパッシブスピーカーのコンポで、特にプリセットのイコライザー機能が秀逸。小音量でも音がぼやけず、キレのいい音を鳴らしてくれていた。一代で廃盤にしたSONYの正気を疑う。
が、新居で自室が隔離されボリュームを上げて音楽を流せるようになると、どうしても欲が出てもっと「圧」のある音が欲しくなってくる。いい声したシンガーの歌を、ちゃんと空気を震わせて脳と身体にキかせたい。そんなトリップ装置としてのスピーカーが欲しい!というのが事の始まり。
そうなってくると、必要なのは声を身体に響かせる低音なんだけど、さすがにCAS-1の駆体サイズでは力不足が否めない。
ボーカルの空気感までしっかり下支えできる低音を出せて、それでいてこのデスクトップ環境に収まる良さげなスピーカーはないものか、といろいろ検討してたどり着いたのがこのL52だった。
大半のスピーカーはバスレフポートという低音の逃がし穴が背面にあり、音質的にはここと壁との距離が最も影響が大きいポイントらしい。
だが、自室は壁面からディスプレイ前面までが25cmほどしかなく、とはいえ卓上の作業スペースは確保したいので、なるべく画面とスピーカーはツライチ付近に収めたい。そうすると最低限10cmの距離を取るだけでも、実質CAS-1クラスの小型スピーカーが限界ということになってしまう。
ここでCAS-1とL52のサイズを比較してみよう。
幅と高さはそれぞれ倍ほどにサイズアップ。奥行き21.6cmは、このクラスのブックシェルフ型スピーカーの中ではコンパクトな方ではあるけど、置けば後ろの壁まで5cmと余裕はまったくない。
それでもこのL52の導入を決めたのは、このスピーカーが珍しくフロントバスレフ構造を採用していたから。
向かって左上、顔に見立てれば右目にあたる黒い穴がそれ。気休め程度かもしれないけれど、少なくとも至近距離の壁にぶつけて音のバランスを崩すよりはマシなはず。
32インチディスプレイの左右に配置してこんな感じ。
左の袖机が微妙に低いので、適当な木片と金属板で揃え、昔買ったAudio-technicaのインシュレーターをかませた。
後ろの壁との隙間は5cmほど。
でもこの佇まいなら文句なし。かっこいいというより、収まりがいい。
ロゴ部にあるつまみは高音の調整用。標準で特に違和感ないからそのまま使用している。
背面のケーブル端子。バイワイヤには対応していないけど、フルサイズアンプを使うわけでもないので問題ない。
付属のカバーは特徴的なサイコロ状のスポンジっぽい質感。ホコリが溜まりそうで心配だけど、半月使った現段階では気になるほどの汚れは無い。
他にもオレンジと水色の目立つカラー展開があるけど、無難に黒にした。オレンジを選んで部屋のアクセントにしても良かったかもな、と今になって思うが、グリルだけでペア2万円以上するみたいで白目向いた。
傾向としては明確に低音寄りで、雑に言えば音がトロい。疾走感のあるロック系の曲では、少し先走ってちょうどいいくらいのギターがまったり耳に届いてきて「ちゃうねん…!!」ってなるし、それならまだCAS-1でボリューム上げる方がノリ良く聴ける。フロントバスレフとはいえセッティングが壁から近すぎて低音が膨れてるのはあると思うけど、それを差し引いてもキレのあるタイプではない。
解像度もそれほど高くないので、打ち込み系や邦ロックのような音数の多い曲ではどうしてもごちゃごちゃしてしまって、分析的に聴くには向いていない。
逆にボーカルが楽器を導くような落ち着いた曲にはこの上ないハマり方をする。何の気なしに流したJoni Mitchellの”Blue”が良すぎて久々にアルバムぶっ通しで聴かされてしまった。
人、皆須らく”Blue”を聴いて死すべし。
L52の良さ、文字で説明するのが難しくて、というのも言葉にできる「音質」の範囲ではそんなに飛び抜けた魅力がない。高音・低音・解像度・定位感、個々の要素に分解すればどれも「それなり」とか「普通に良い」くらいしか言えない。
でも曲として浴びたときのまとまりの良さと、少し部屋の気圧が上がったように感じるほどのぐっと迫る空気感の出し方が半端なく上手い。
なのでそもそも曲自体に「空気感」を感じられるだけの隙間が無い打ち込み系とか、やたら音数の多いロックなんかは相性最悪で、逆にちゃんと引き算ができてて、しっかり「余白」を楽しめるだけの余裕のある曲はめちゃめちゃいい雰囲気で鳴らしてくれる。
自分は聴かないけど確かにJBLがJAZZに合うというのも頷ける。これが所謂『JBLサウンド』ってやつか…
どれもめちゃくちゃ好きな曲。音楽の趣味が合う人間に出会ったことが今まで殆ど無いので誰に刺さるかはわからないけど、せっかくだから聴いてって。
十年以上前から推してる。最近PitchforkでもBest New Tracks入りしててガッツポーズした。
ボーカルの余韻まで含めた素朴な空気感が広がるのがすごい。これはヘッドホンじゃ出せない。
TV on the Radioを知らないなら『Dear Science (2008)』だけでも聴いて。すごいから。
これくらいガッツリ鳴らしてても、ちゃんと「匂い」のある曲ならしっかり音に乗せて漂わせてくれる。
ラストは15年間聴き続けてるBON IVER。
正直何で聴いても素晴らしいのでよくわからん。とにかく聴いてけ。
あれ?ちょっとまって、さっきから気になってたんだけどそのアンプなに??
というお話はまた今度…
[追記:書きました。]
おしまい
JBL L52 Classic
オーディオの老舗JBLのラインナップの中でも比較的小ぶりなパッシブスピーカー。その昔あったL100シリーズの小型版として2021年に登場したL52 Classic。自室のデスクトップでの音楽環境をアップグレードしようと考えたときに、サイズや構造など後述する諸々の条件ががちょうどよかったので思い切って導入してみた。
ひとまず2週間ほど使ってみたのでファーストインプレッションをまとめておく。
<追記>
合わせて使ってるTEACの卓上アンプについてはこちらの記事をどうぞ。
購入経緯
これまでデスクトップ環境で使っていたのはSONYのコンパクトオーディオシステムCAS-1。これがまた出来が良かった。
USB-DAC付きのデジタルアンプと超コンパクトなパッシブスピーカーのコンポで、特にプリセットのイコライザー機能が秀逸。小音量でも音がぼやけず、キレのいい音を鳴らしてくれていた。
が、新居で自室が隔離されボリュームを上げて音楽を流せるようになると、どうしても欲が出てもっと「圧」のある音が欲しくなってくる。いい声したシンガーの歌を、ちゃんと空気を震わせて脳と身体にキかせたい。そんなトリップ装置としてのスピーカーが欲しい!というのが事の始まり。
そうなってくると、必要なのは声を身体に響かせる低音なんだけど、さすがにCAS-1の駆体サイズでは力不足が否めない。
ボーカルの空気感までしっかり下支えできる低音を出せて、それでいてこのデスクトップ環境に収まる良さげなスピーカーはないものか、といろいろ検討してたどり着いたのがこのL52だった。
机上で活きるフロントバスレフ
壁に面した机上の32インチディスプレイ横が設置場所。幅と高さはそこそこ余裕があるけど、問題は奥行き。大半のスピーカーはバスレフポートという低音の逃がし穴が背面にあり、音質的にはここと壁との距離が最も影響が大きいポイントらしい。
だが、自室は壁面からディスプレイ前面までが25cmほどしかなく、とはいえ卓上の作業スペースは確保したいので、なるべく画面とスピーカーはツライチ付近に収めたい。そうすると最低限10cmの距離を取るだけでも、実質CAS-1クラスの小型スピーカーが限界ということになってしまう。
ここでCAS-1とL52のサイズを比較してみよう。
モデル | 幅 (cm) | 高さ (cm) | 奥行き (cm) |
---|---|---|---|
SONY CAS-1 | 9.5 | 17.8 | 17.2 |
JBL L52 Classic | 19.7 | 33.1 | 21.6 |
幅と高さはそれぞれ倍ほどにサイズアップ。奥行き21.6cmは、このクラスのブックシェルフ型スピーカーの中ではコンパクトな方ではあるけど、置けば後ろの壁まで5cmと余裕はまったくない。
それでもこのL52の導入を決めたのは、このスピーカーが珍しくフロントバスレフ構造を採用していたから。
向かって左上、顔に見立てれば右目にあたる黒い穴がそれ。気休め程度かもしれないけれど、少なくとも至近距離の壁にぶつけて音のバランスを崩すよりはマシなはず。
32インチディスプレイの左右に配置してこんな感じ。
左の袖机が微妙に低いので、適当な木片と金属板で揃え、昔買ったAudio-technicaのインシュレーターをかませた。
後ろの壁との隙間は5cmほど。
外観
いくらサイズや機能で絞っても毎日向き合うものなので趣味に合わない面は困る。でもこの佇まいなら文句なし。かっこいいというより、収まりがいい。
ロゴ部にあるつまみは高音の調整用。標準で特に違和感ないからそのまま使用している。
背面のケーブル端子。バイワイヤには対応していないけど、フルサイズアンプを使うわけでもないので問題ない。
付属のカバーは特徴的なサイコロ状のスポンジっぽい質感。ホコリが溜まりそうで心配だけど、半月使った現段階では気になるほどの汚れは無い。
他にもオレンジと水色の目立つカラー展開があるけど、無難に黒にした。オレンジを選んで部屋のアクセントにしても良かったかもな、と今になって思うが、グリルだけでペア2万円以上するみたいで白目向いた。
音質
L52の肝心の音は、キャラクターがはっきりしていて得意不得意が明確に分かれる。傾向としては明確に低音寄りで、雑に言えば音がトロい。疾走感のあるロック系の曲では、少し先走ってちょうどいいくらいのギターがまったり耳に届いてきて「ちゃうねん…!!」ってなるし、それならまだCAS-1でボリューム上げる方がノリ良く聴ける。フロントバスレフとはいえセッティングが壁から近すぎて低音が膨れてるのはあると思うけど、それを差し引いてもキレのあるタイプではない。
解像度もそれほど高くないので、打ち込み系や邦ロックのような音数の多い曲ではどうしてもごちゃごちゃしてしまって、分析的に聴くには向いていない。
逆にボーカルが楽器を導くような落ち着いた曲にはこの上ないハマり方をする。何の気なしに流したJoni Mitchellの”Blue”が良すぎて久々にアルバムぶっ通しで聴かされてしまった。
人、皆須らく”Blue”を聴いて死すべし。
L52の良さ、文字で説明するのが難しくて、というのも言葉にできる「音質」の範囲ではそんなに飛び抜けた魅力がない。高音・低音・解像度・定位感、個々の要素に分解すればどれも「それなり」とか「普通に良い」くらいしか言えない。
でも曲として浴びたときのまとまりの良さと、少し部屋の気圧が上がったように感じるほどのぐっと迫る空気感の出し方が半端なく上手い。
なのでそもそも曲自体に「空気感」を感じられるだけの隙間が無い打ち込み系とか、やたら音数の多いロックなんかは相性最悪で、逆にちゃんと引き算ができてて、しっかり「余白」を楽しめるだけの余裕のある曲はめちゃめちゃいい雰囲気で鳴らしてくれる。
自分は聴かないけど確かにJBLがJAZZに合うというのも頷ける。これが所謂『JBLサウンド』ってやつか…
「合う」曲
説明が難しいので、このスピーカーに合うおすすめの曲をいくつかリストアップしておく。どれもめちゃくちゃ好きな曲。音楽の趣味が合う人間に出会ったことが今まで殆ど無いので誰に刺さるかはわからないけど、せっかくだから聴いてって。
Waxahatchee – “Write Back to It”
十年以上前から推してる。最近PitchforkでもBest New Tracks入りしててガッツポーズした。
ボーカルの余韻まで含めた素朴な空気感が広がるのがすごい。これはヘッドホンじゃ出せない。
TV on the Radio – “Staring at the Sun”
TV on the Radioを知らないなら『Dear Science (2008)』だけでも聴いて。すごいから。
これくらいガッツリ鳴らしてても、ちゃんと「匂い」のある曲ならしっかり音に乗せて漂わせてくれる。
BON IVER – “Heavenly Father”
ラストは15年間聴き続けてるBON IVER。
正直何で聴いても素晴らしいのでよくわからん。とにかく聴いてけ。
あとがき
ということで最後は趣味がだだ漏れてしまったけれど、新顔のスピーカーの紹介でした。あれ?ちょっとまって、さっきから気になってたんだけどそのアンプなに??
というお話はまた今度…
[追記:書きました。]
おしまい
コメント
通りすがりのものです。
自分にとってとてもタイムリーな記事でした。
自分もデスクトップ上のスピーカーをアップグレードしたいと思ってます。
既存のスピーカーがELAC Debut 2.0 b6.2でDax付きアンプがTEAC の別機種。別に不満はないんです。ただもっと音にメリハリが有ればなぁと思うことがたまにありまして。
選択肢の一つとしてJBLのL52が良いかな? 4309も無理すれば置けるかなぁと悩んでいたところでした。
前面バスレブに関しては自分も同意です。そして選択肢が少ない。
ただ自分は速度のある解像度の高いスピーカーが好きなのでJBL自体が合わないのではないかとも思ってます。
バスレブが前面か底面に向いてるスピーカーで好みの音が出るスピーカー無いかなとスピーカー選びの旅はまだ続くのでした。