JARIよさらばー4年乗ったグラベルロードについての覚書

レビュー
自身初のグラベルロードとして導入したFUJI JARI 1.3。4年に渡って未舗装サイクリングの主力として大活躍してくれた。

突然ながら、この度新たな自転車に乗り換えることにしたので、餞別代りに最終インプレッションと、その他細々したこともこの際まとめて書き残しておく。


FUJI JARI 1.3 最終インプレッション


アルミフレームにカーボンフォーク。サスやショックステム等、特殊な機構は無いシンプルな仕様。

重量級のマディフォックスでは厳しい未舗装路を含むロングライドを目的として導入した。

【47台目】FUJI JARI 1.3 (2019) ① 購入動機編


走行性能について

個人的にはグラベルロードはあくまで「ロードバイク」の派生として、走りの快適性を極力スポイルしないものが理想。なのでサドルやブラケット高もほぼロードと同じペダリング優先のポジションを取りたい。

購入動機に書いた狙い通り、JARIは最近のグラベルロードと比べるとBB下りとリアセンター(あるいはホイールベース)の値が小さめのロード寄りジオメトリーでアプローチの舗装路のみならず、砂利道でもある程度の路面状態までならかなりロードライクな走りができる。


最近主流のBB下り75mmや下手すれば80mmに迫るようなバイクは、確かにオフロードでの安定感は増すかもしれないが、いわゆるイン・ザ・バイク系というか、自転車に埋もれるような乗り心地がどうにも苦手。これまでリジッドMTBを好んで乗っていた身からすれば乗車時のスリルに欠けてせっかくのグラベルの楽しさが薄れてしまう。

軸足はロードライクな走行感に置き、それでいてオフロードにも怯まず突っ込めるだけの(だけど決して過剰にならない)走破性。それを両立してくれるJARIの走りが本当に気に入っている。


舗装路からフラットなグラベルまでをロード的ポジションで爽快に漕ぎ、ガレ道では腰高な車体をどうにか乗りこなしてスピード感(≠絶対速度)を楽しむ。この絶妙なバランスが最高に気持ちいい。

JARIはいいぞ。とてもいいぞ。

荷物を積んだほうが「よく」走る



思い返せば初陣は納車24時間以内にFUJIのJARIで富士の砂利を踏むライド。のっけからフルパッキングで富士界隈と伊豆大島を攻めた。

【2020春ツーリング】納車24時間以内にFUJIのJARIで富士の砂利を踏むライド 【DAY1】




翌年の北海道グラベル野宿ツーリングなどでもフロント積載メインで運用。

【北海道グラベル野宿旅】函岳 美深歌登スーパー林道 この先砂利道75km【DAY3】



その後も重装備ライドのたびに思うのが、この自転車は荷物を積んでこそ本領を発揮するタイプだということ。

もちろん絶対的な速度は空身のほうが速いけど、キャンプ装備満載時にしか味わえない独特のレスポンスというか、ペダルを踏んだ力が推進力に変わっていくまでのリズムが自分の期待にぴったり合うような気持ちよさを味わうことができる。この感覚はこれまで乗ってきた自転車の中でもJARIでしか味わえないものだった。

惜しむらくはこうしたフル装備の自転車旅に出る機会が限られていたこと。仕事全部掘り投げて一ヶ月くらい野宿旅したいなあ…

細タイヤでは乗り心地がおしまいになる

上記の積載時の乗り心地の良さはおそらくフレームの剛性と、太タイヤや積載重量を含めたフレームへの入力とのバランスが合っていることが原因だと思うけど、その裏返しでフレーム単体での乗り味はめちゃくちゃソリッド。

太めのタイヤならそれほど気にならないけれど、ものは試しで25cのロードタイヤを履かせて走ったらそれはもうびっくりするくらい乗り心地が悪かった。


路面からの振動が全部ダイレクトにハンドルやサドルに跳ね返ってきて、ちょっとでも舗装が荒れだすと跳ねるわブレるわ暴れるわで乗れたもんじゃない。

その分しっかり進んでくれるならまだ我慢するが、漕いでも力がヒラヒラと何処かへ逃げていってしまうようで全くペダリングのリズムが掴めない。

32cにすればいくぶんマシだが、それでも25cを履いたDEFYのほうが遥かに快適。自転車の設計における剛性バランスの重要性が身にしみて理解できた。

650B運用がバッチリハマった


2年ほど前、マディフォックスで使用していたMAVICのMTBホイール CROSSMAX SLに換装してみた。フロントは15mmスルーのホイールに12mmのシャフトを通して使っている(…が、実はフォークとハブエンドの接合部の径があっておらず、半ば無理やり固定している状況だったことをついこの前知った)。

タイヤは47cのWTB Ventureに代え、前後で300g以上重くなったので走行感が鈍らないかと心配したが以外にもそれほど気にならず、むしろペダリングの感触も700c以上にしっくり来たし、グラベルや担ぎでの取り回しの良さ、そして何よりこのまとまりのあるフォルムがとても気に入ったので、以降今日までずっと650Bスタイルでの運用となった。

フォークの剛性が低い?


他のフォークと比較をしていないのではっきりしたことはわからないが、フレームに比べてフロントフォークの剛性が低く、特にグラベルダウンヒルのコーナーをハイスピードで攻めたときに預けた荷重が定まらず、イメージしているラインよりもわずかに外側に広がってしまうような感触がある。(前述の15mmシャフト不一致の問題はあるが、700cのホイール時から感じていたのであまり関係はないと思う。)

フォークの単体重量は482gだったが、最近オーダー車でのアッセンブルもよく見かけるワンバイエスのグラベルカーボンフォークがカタログ値530g超えであることを考えると、ちょっと軽すぎるのかもしれない。

あとフォークダボの精度が悪く、一部のネジが斜めに切ってあるためフォークラックを取り付けた際に隙間があき、荷重が集中しておそらくネジが舐めかけている。

大きめの前三角が何かと使いやすい

ホリゾンタルに近い方がかっこいいじゃん、という好みが一番ではあるけれど、実際サイクリングの場面でも前三角が大きいと何かと便利だ。


積載時はフレームバッグとボトルとの間に余裕ができる。

ただイケてないのはダボ穴の位置で、一般的なロードバイクなどと同じ中途半端な高さにありそのままではボトル位置が高すぎるのでミノウラのスライドケージで限界まで下にオフセットしている。



ロードレーサーが高速走行時にボトルを取りやすいようにと高めにダボを打つのはまだわかるけど、グラベルロード含めたすべてのサイクリング車は初めっから下限いっぱいで穴開けろよ!と声を大にして言いたい。(あとすべてのボトルケージはスライドケージ的な構造にしろ)


あとはなんといっても担ぎやすさ。

自分は基本的にトップチューブを右肩に担ぐオーソドックスなスタイルを多用するため、前三角が大きいと非常に担ぎやすい。


ちなみにJARIにはデフォルトで2mm圧のシリコンパッドがこの位置に付属するが、実際に担いでみると屁の突っ張りどころかむしろ扁平なフレームより接地面積が減って痛みが増すまであるので、カッターで切除してトップチューブの上側に貼っつけておいた。

いろいろ試したが、モンベルのフレームバッグにプチプチを詰めるのが今のところ一番楽に担げる。

コンポはダブルに限る

これは別記事に詳しく書いたのでそちらで。

【コンポ】さらばフロントシングルーGRXのダブルを導入するまでの記録
フロントシングルを実際に使ってみたものの、ギア比、重量、メカトラ対策、数多くのデメリットに対してメリットは整備性の良さくらいで半年もせずに交換してしまった。


ことサイクリング車においてフロントシングルに優位性なんてねぇ!という重いは未だに変わっていない。

ちなみに初期のシングルからダブルへの換装時、アウターケーブルを通す用の穴あきグロメットを追加で取り寄せた。

クリアランスの罠

謎の経緯でパナレーサーから直々に頂いた新グラベルキング X1。どうせなら今まで使ったことのないサイズを、と思って45cをお願いした。JARIはこの2019年モデルのHPにも45cまで対応との記載があり、イケるやろ!と思って導入したら…


なんでや!!

ヒゲが当たる、とかいうレベルではなくガッツリ擦って車輪がほとんど回らない。

使用しているリムはST SWISSの内幅19mmでそれほどワイドというわけでもないし、実際にノギスで測ったタイヤ幅は44mmちょい。


ホイールのセンターズレも疑ったが、反対側も1mm空くかどうかなのでズレていたとて、って感じ。

空気圧を1.5気圧程度まで下げれば、擦りながらでも多少回るようにはなったが、ダンシングでフレームがよれたりすることを考えるととても乗る気にはなれない。

650Bの場合は47cのWTB Ventureでは問題なかったが、700cではクリアランスの余裕を考えると42cあたりが限界のようだ。

メーカー(というか代理店)のHPは鵜呑みにしてはいけない。クリアランスはちゃんと自分で測ろう。

あとがき-そしてDAVOS D-309へ

後半は色々ネガティブなことも書いたが、最初に書いた通り「走り」に関してはこの上なく気に入っている。

…じゃあそのままJARIに乗れよ、という話なんだけど、そこに落とし穴があった

JARIはいい。とてもいい。それが確信に変わったからこそ、ある事実が頭から離れない。

おれは、この素晴らしいJARIの、上位互換機の存在を既に知ってしまっている


つづく

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