湖東は霊山界隈の廃村を巡るサイクリングをしてきた。
どんなところを走ったのかは、ほぼ同じところを走っておられたフォロワーのたまさんがたまたま自分が走った同日に投稿された素晴らしい記事があるのでそちらに任せる。

晴れてるなあ…羨ましいよ…
おれの記事ではいつも通り大した情報も書いてないので、どんなサイクリングになったかの顛末だけを存分に楽しんでいってくれ。
端的に言うなら、雨と霧の廃村巡って、豪州人と3次元・見知らぬ同士とは4次元交差。その後山蛭血塗れ撤退戦だ。おれもわけがわからん。ほないきます。
朝、前日から降り続いた雨も上がり、天気予報は曇りのち晴れ。
水面下で導入した新兵器を携えて、湖東は霊山の近くまでやってきた。
雨雲レーダーをチェック。問題なし。
窓の外をチェック。大問題。
ということで霧雨に打たれながら出発。
林道に入ってすぐ、おれが登ったのか雲が降りたのか、あたりは薄靄に包まれた。
視界はせいぜい20m程度か。廃村巡りにはこの上ない絶好の日和だな!!
しばらく山を登っていくと、鬱蒼とした森の中でも一際存在感を放つ巨木群が現れた。
それ一本でも十分名所になれそうな御神木に四方を囲まれたなんとも贅沢な祠。その全容はとてもじゃないが写真に収まらん。
それぞれの幹の太さは自転車の全長とほぼ同じくらい。
吸い寄せられるように抱きついてみると、苔むした樹皮の奥から桁外れの存在感が伝わってきて、同じ「生き物」として圧倒的な格の違いを感じさせられる。

そのまま見上げると樹上が霞む。なんちゅうデカさだ。
「高ぇとこから見下しやがって」と無理やり虚勢を張ってみて、斧と鋸でぶった斬ったらどんな気持ちになるんだろうか、などと考えてみる。世に数少ない実現可能な「神殺し」。何かの拍子に世を捨てて独り生きることになったなら、一度は対決してみたい。
その後も山中に点在する廃村をいくつも通り抜けてゆく。
相変わらず霧のような雨のような曖昧な水滴が身体を濡らし続けていたが、時折風が吹くとボタボタとした大きめの雨粒に変わる。
[雨宿りのパラドックス] 雨を凌がねば凍えて死ぬが、雨を凌げば潰れて死ぬ
コアラだけがやけに新しい。
廃墟に新しめのぬいぐるみって組み合わせ、わりと頻繁に見かける気がするんだけど、なんかそういうフェティシズムの一派がおるんか??
相変わらず車はおろか人気も皆無な林道を下っていると、前から自転車に跨った白人カップルの姿が。キャリアにはパニアバッグ、上半身には蛍光ベスト、紛うことなきサイクルツーリストだ。
繰り返すがここは湖東霊山の麓、地元の人間にも忘れ去られた廃村が連続する名もなき林道。どう考えてもおすすめルートに乗るような道ではない。
当然声をかけるが、挨拶もそこそこに口をついて出たのは
“Why the hell are you taking this road?? Cool!!!”
挿入句の”the hell”をあれほどナチュラル&ポジティブに口から出せたの、たぶん人生初だな。
いろいろお話を伺うと、オーストラリアからのお二人だそうで、日本は鹿児島を出発して北海道へと向かう旅の途中だという。
このま岐阜へ抜けて乗鞍越えを目指すとのこと。天候によっては通行止めも頻繁にあるところなので、天気予報と現状の開通状況を見ようとスマホに手を伸ばすが当然のように圏外。
まあおれは筋金入りの雨男だからな、今日の雨はおれのせいにしていいよ(I’m “the” man cursed by rain. Blame this rain on me.)。
なんて冗談を飛ばしながら初めの疑問に話を戻せば、旅のルートは常に交通量の少なさを最優先に選んでいるそうで、そうだよな、路面にデカめの岩落ちてたら逆に安心するよな、わかるぜ、兄弟。
みたいなことを雑談したあと、互いの安全を祈って霧深い山へと登りゆく二人の背中を見送った。
年齢は聞かなかったが、おそらく20代半ばくらいだろうか。遠い異国を若い二人で端から端まで自転車で、いいなあ、ただただ羨ましい。
廃村は続く
何がはいってるんだろうな。
ここまでもずっと廃道一歩手前の雰囲気が漂っていたが、とある分岐の先からはついに路面が堆積した杉枝に覆い隠されたマジもんの廃道に変わった。
よしよし、こうでなくっちゃな、とワクワクし出した視界の端に、青く煌めく異質な光。
OAKLEYのアイウェア、それもロード乗りに愛用者の多いSUTROがポトリと杉枝の上に落ちていた。
こんな道を自分以外にやってきたサイクリストが他にもいたのか、という驚きに加えて、ちょうど先日の壁地獄に自前のサングラスを贄として捧げてきたところだったので、まさに狐につままれたような気持ちだった。
それなりに汚れてはいたが、とは言え杉枝に覆われてもいないことからそれほど古いものでもないだろう。
帰宅後、冒頭のブログを書かれたたまさんにもお聞きしてみたが(SUTROは持ってるらしいけど(持ってるんかい))該当せず、ということはだ、少なくともおれも含めて3人、いやさっきのオーストラリアンカップルも加えると5人ものサイクリストが短い期間の間にこのあたりを訪れていたことになる。
誰からも忘れられたような廃村群の真っ只中で、同じ嗜好をもった数多の同士の足跡が僅かな時間軸だけを違えて交わっているこの現実、めちゃくちゃおもしろいな。
さあここからは草木に埋もれた本気の廃道、つまりはお待ちかね、担ぎの時間だ。
軽くなった得物を肩にかけて意気揚々と進みだそうとしたまさにその時、足にちょっとした違和感。
チクッとしたような、痒いような、なにか刺さったか?と思って軽く手だけで払ってみると、一瞬触れる冷たくやわらかいなにか。コンマ数秒で脳がアラートを発すると同時に目線を送る。
…オhウhフff…
出ましたね、やられましたわ。見ろよこれ。靴下の上から頭だけ突っ込んででっぷり太るまで吸い付いてやがる。
そう、まだこの時点では余裕があった。今更山蛭の一匹ごときで誰がビビるかよ。
だがしかし、デコピンを数発繰り出して太った一匹を取り払い、すこし落ち着いて目線を送った足元の光景に悪寒を通り越した余りにも醜悪な稲妻が脊髄を駆け抜ける。黒いSPDシューズの至る所に、細く小さな無数のヒルがピコピコと、そう、あれは「ウネウネ」などではなく「ピコピコ」としか表現できないおぞましくハイテンポなリズムで蠢いていたのである。
絶叫。
30も半ばのおっさんからでもあんな悲鳴って出るんだな。自転車担いだまま、我を忘れて今来た道を猛ダッシュで駆け戻る。まだそれほど遠く離れていなかった車道にたどり着き、アスファルトで滑稽無様極まるタップダンスを目一杯披露してから靴を脱ぎ、半狂乱で近くの岩に叩きつける。幸い皮膚に吸い付く前の蛭共はそれほどしぶとくもなく、とりあえず靴は目視できる限りでは振り落とせたようだ。
あー怖かった…
一段落して靴を履き直そうと自分の靴下に目を向けると
絶叫(2度目)。
完全に戦意を喪失。全速撤退戦へと移行する。退避ィィイイーッッッ!!退イ避ィィィイイッヒイィィィーーーッッ!!!!
いつかみたDUNさんのウルトラC “吸血地獄ヒルジン” が脳裏をよぎる
どんなところを走ったのかは、ほぼ同じところを走っておられたフォロワーのたまさんがたまたま自分が走った同日に投稿された素晴らしい記事があるのでそちらに任せる。

【上石津~五僧峠~男鬼集落跡~多賀大社】ロードバイクで多賀町の廃集落を巡ってきた | TAMAISM
今回はロードバイクで滋賀県多賀町周辺の廃村・廃集落を回ってきました。滋賀県の東部・湖東エリアのなかでも、多賀大社で有名な多賀町の山中(鈴鹿山脈)には多くの廃集落がある…という情報を得たので、散策に便利な自転車を持ち出して行ってきたという流れ
晴れてるなあ…羨ましいよ…
おれの記事ではいつも通り大した情報も書いてないので、どんなサイクリングになったかの顛末だけを存分に楽しんでいってくれ。
端的に言うなら、雨と霧の廃村巡って、豪州人と3次元・見知らぬ同士とは4次元交差。その後山蛭血塗れ撤退戦だ。おれもわけがわからん。ほないきます。
朝、前日から降り続いた雨も上がり、天気予報は曇りのち晴れ。

水面下で導入した新兵器を携えて、湖東は霊山の近くまでやってきた。

雨雲レーダーをチェック。問題なし。

窓の外をチェック。大問題。
ということで霧雨に打たれながら出発。
林道に入ってすぐ、おれが登ったのか雲が降りたのか、あたりは薄靄に包まれた。

視界はせいぜい20m程度か。廃村巡りにはこの上ない絶好の日和だな!!
しばらく山を登っていくと、鬱蒼とした森の中でも一際存在感を放つ巨木群が現れた。

それ一本でも十分名所になれそうな御神木に四方を囲まれたなんとも贅沢な祠。その全容はとてもじゃないが写真に収まらん。

それぞれの幹の太さは自転車の全長とほぼ同じくらい。
吸い寄せられるように抱きついてみると、苔むした樹皮の奥から桁外れの存在感が伝わってきて、同じ「生き物」として圧倒的な格の違いを感じさせられる。

そのまま見上げると樹上が霞む。なんちゅうデカさだ。
「高ぇとこから見下しやがって」と無理やり虚勢を張ってみて、斧と鋸でぶった斬ったらどんな気持ちになるんだろうか、などと考えてみる。世に数少ない実現可能な「神殺し」。何かの拍子に世を捨てて独り生きることになったなら、一度は対決してみたい。
その後も山中に点在する廃村をいくつも通り抜けてゆく。
相変わらず霧のような雨のような曖昧な水滴が身体を濡らし続けていたが、時折風が吹くとボタボタとした大きめの雨粒に変わる。

[雨宿りのパラドックス] 雨を凌がねば凍えて死ぬが、雨を凌げば潰れて死ぬ

コアラだけがやけに新しい。
廃墟に新しめのぬいぐるみって組み合わせ、わりと頻繁に見かける気がするんだけど、なんかそういうフェティシズムの一派がおるんか??
相変わらず車はおろか人気も皆無な林道を下っていると、前から自転車に跨った白人カップルの姿が。キャリアにはパニアバッグ、上半身には蛍光ベスト、紛うことなきサイクルツーリストだ。
繰り返すがここは湖東霊山の麓、地元の人間にも忘れ去られた廃村が連続する名もなき林道。どう考えてもおすすめルートに乗るような道ではない。
当然声をかけるが、挨拶もそこそこに口をついて出たのは
“Why the hell are you taking this road?? Cool!!!”
挿入句の”the hell”をあれほどナチュラル&ポジティブに口から出せたの、たぶん人生初だな。

いろいろお話を伺うと、オーストラリアからのお二人だそうで、日本は鹿児島を出発して北海道へと向かう旅の途中だという。
このま岐阜へ抜けて乗鞍越えを目指すとのこと。天候によっては通行止めも頻繁にあるところなので、天気予報と現状の開通状況を見ようとスマホに手を伸ばすが当然のように圏外。
まあおれは筋金入りの雨男だからな、今日の雨はおれのせいにしていいよ(I’m “the” man cursed by rain. Blame this rain on me.)。
なんて冗談を飛ばしながら初めの疑問に話を戻せば、旅のルートは常に交通量の少なさを最優先に選んでいるそうで、そうだよな、路面にデカめの岩落ちてたら逆に安心するよな、わかるぜ、兄弟。

みたいなことを雑談したあと、互いの安全を祈って霧深い山へと登りゆく二人の背中を見送った。
年齢は聞かなかったが、おそらく20代半ばくらいだろうか。遠い異国を若い二人で端から端まで自転車で、いいなあ、ただただ羨ましい。
廃村は続く



何がはいってるんだろうな。
ここまでもずっと廃道一歩手前の雰囲気が漂っていたが、とある分岐の先からはついに路面が堆積した杉枝に覆い隠されたマジもんの廃道に変わった。
よしよし、こうでなくっちゃな、とワクワクし出した視界の端に、青く煌めく異質な光。

OAKLEYのアイウェア、それもロード乗りに愛用者の多いSUTROがポトリと杉枝の上に落ちていた。
こんな道を自分以外にやってきたサイクリストが他にもいたのか、という驚きに加えて、ちょうど先日の壁地獄に自前のサングラスを贄として捧げてきたところだったので、まさに狐につままれたような気持ちだった。
それなりに汚れてはいたが、とは言え杉枝に覆われてもいないことからそれほど古いものでもないだろう。
帰宅後、冒頭のブログを書かれたたまさんにもお聞きしてみたが(SUTROは持ってるらしいけど(持ってるんかい))該当せず、ということはだ、少なくともおれも含めて3人、いやさっきのオーストラリアンカップルも加えると5人ものサイクリストが短い期間の間にこのあたりを訪れていたことになる。
誰からも忘れられたような廃村群の真っ只中で、同じ嗜好をもった数多の同士の足跡が僅かな時間軸だけを違えて交わっているこの現実、めちゃくちゃおもしろいな。
さあここからは草木に埋もれた本気の廃道、つまりはお待ちかね、担ぎの時間だ。
軽くなった得物を肩にかけて意気揚々と進みだそうとしたまさにその時、足にちょっとした違和感。
チクッとしたような、痒いような、なにか刺さったか?と思って軽く手だけで払ってみると、一瞬触れる冷たくやわらかいなにか。コンマ数秒で脳がアラートを発すると同時に目線を送る。

…オhウhフff…
出ましたね、やられましたわ。見ろよこれ。靴下の上から頭だけ突っ込んででっぷり太るまで吸い付いてやがる。
そう、まだこの時点では余裕があった。今更山蛭の一匹ごときで誰がビビるかよ。
だがしかし、デコピンを数発繰り出して太った一匹を取り払い、すこし落ち着いて目線を送った足元の光景に悪寒を通り越した余りにも醜悪な稲妻が脊髄を駆け抜ける。黒いSPDシューズの至る所に、細く小さな無数のヒルがピコピコと、そう、あれは「ウネウネ」などではなく「ピコピコ」としか表現できないおぞましくハイテンポなリズムで蠢いていたのである。
絶叫。
30も半ばのおっさんからでもあんな悲鳴って出るんだな。自転車担いだまま、我を忘れて今来た道を猛ダッシュで駆け戻る。まだそれほど遠く離れていなかった車道にたどり着き、アスファルトで滑稽無様極まるタップダンスを目一杯披露してから靴を脱ぎ、半狂乱で近くの岩に叩きつける。幸い皮膚に吸い付く前の蛭共はそれほどしぶとくもなく、とりあえず靴は目視できる限りでは振り落とせたようだ。
あー怖かった…
一段落して靴を履き直そうと自分の靴下に目を向けると

絶叫(2度目)。
完全に戦意を喪失。全速撤退戦へと移行する。退避ィィイイーッッッ!!退イ避ィィィイイッヒイィィィーーーッッ!!!!
いつかみたDUNさんのウルトラC “吸血地獄ヒルジン” が脳裏をよぎる
— DUN (@high_left)
June 14, 2022
かゆい うま
最後まで良い演出してくれるよナア!!????
こうして廃村の余韻に浸るまもなく、人里へと逃げ下った。
!!!!!以下出血画像あり注意!!!!!
車のデポ地まで帰って靴を脱ぐと、最初に噛みつかれていた足首からの出血が思った以上の量になっていた。
血液凝固を阻害するヒルジンの効能は凄まじく、噛まれて5時間近く経過した帰宅後もまだ止まることなく流れ続けた。
ほんとにいつまで経ってもタラタラと流れ出てくる。
この一番でかいところにだけ気を取られていたけれど、風呂前によく見てみると右足だけで他にも4箇所、合計5箇所も吸い付かれていた。つまりあのあとから見つけたチビたちもいっちょ前に一噛みはしていたらしい。
風呂上がりになってもまだ微妙に出血が続いていたので、娘に絆創膏を貼ってもらいながらヒルというこわーい生き物についておどろおどろしく語っていたら後ろから妻にシバかれた。
廃村・御神木・出会い・落とし物・蛭地獄、大した距離も走ってないのに情緒の推移が凸凹すぎて、まとめる言葉も思いつかん。導入したての新兵器の話を挟む余裕すらなかったから、また今度な。
サイクリングって、おもろいぞ。
おしまい
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