夏、久しぶりに2泊3日の出撃許可が下り、四国のUFOラインやカルストの界隈をめぐるツーリングへと出かけた。
当初8月10日〜12日で計画していた旅程はしかし、九州地方に大きな被害を出したこの夏初めての長雨がものの見事にダダ被りする筋金入りの雨男っぷりを発揮。
年に一度の2泊3日野宿ツーリング、現状。 pic.twitter.com/KEDwl20HJS
— やくも (@wartori621) August 6, 2025
嘆いたって仕方がない、雨なら雨でそこにあるはずの絶景を心眼で拝みに行ってやらあ!!と、装備を整え豪雨ツーリングに向けて腹を括った矢先、見かねた妻が出発前日に雨の上がるお盆後半への延期を提案してくれた。
とてもとてもありがたかったが、実はかなり葛藤があった。なにせ、もうずぶ濡れツーリングを想定してコースも装備も覚悟も完了させた後だったので、いっそこのまま飛び出してやろうか…と半日ほど逡巡したが、どうやら雨足が洒落にならなさそうな気配だったので流石に自重。雨上がりの約束された晴れ間に旅立つこととなった。
出発
大阪の自宅から四国中央市の伊予三島駅まで新幹線と特急しまかぜを乗り継ぎ輪行。始発で出たがお盆ということもありそこそこ混雑はしていたが、特大荷物のスペースを抑えられたのは助かった。
百均スリッパのない輪行移動をおれは拷問に分類している。
伊予三島駅に9時前に到着し輪行解除。最初に向かったのは近くのスーパーフジ。スタート地点のこの店を最後に、明日の昼過ぎまでまともに飯を買えるところはなさそうなので今日の昼から明日の昼までの4食分を買い込んでいく。

サドルバッグは食料オンリー。軽くてカロリーの高い辛ラーメンと焼きそば、どちらも600kcalオーバー。朝夕の調理のためにバーナーとコッヘルは持ってきてるが、行動中にガス欠したらそのまま齧る。栄養バランス?知らん。

補給食にはちょっと前にSNSで話題になっていた梅肉チューブを試してみる。
こいつのおかげか定かじゃないが、鈍った身体で連日エグい峠を2000m以上登った今回のツーリング中でも一度も足を攣ることはなかった。

店前のベンチで蕎麦ときゅうりの塩漬けを汁まで残さずかっくらい、子供用の遊具スペースにあった水道で頭から水を被っていざ出撃。

さすが四国、海沿いからの最初の壁がすでにボス感のある険しさ。
海を尻目にぐいぐい登って具定展望台から法皇トンネルへと続くR319を進む。交通量はそこそこ。


トンネルは1.6kmと長い割に幅が狭くすれ違いポイントで対向車をやり過ごしながら海から一層目の山を突き抜け深い四国の山に分け入っていく。
銅山の谷をゆく
銅山川沿いをおよそ30kmほど、いくつものダムを横目に標高800m近くまで高度をゆるやかに上げながらr6を進む。

フラットなダム湖畔に油断しているとレベルラインが唐突に上がるダム湖特有の地形に翻弄されて激坂に悪態をつく羽目になったり。あの橋まで登るのか…


銅山川の名の通り、このあたりは元禄の時代から栄えた別子銅山の一帯。筏津(いかだづ)坑をはじめとしていくつもの鉱山跡が残っている。



1973年の閉山まで300年近く、貨幣になったり薬莢になったりモーターになったり、日本の近代化を支えていたらしい。
三ツ森峠
別子銅山群の東端を突っついてすぐ、お目当ての峠へと県道を逸れて進路を南へと向ける。目指すはもう一層向こう、愛媛と高知の県境だ。実は少し東に大田尾越という舗装路の峠道があって、ちゃんと県道になっててストリートビューもあって、まあ間違いなく越えられる。でもそれじゃあつまんねえよなあ??

ということで、こっち(左)。
ネット上での情報では近年道が付いたとか、峠まではまだ行けないとか、情報が錯綜していたがおそらく何かしらの道はあるだろう。

これまで並走してきた川を錆びた橋で渡る。さあ未知の峠越えのはじまりはじまり、

の前に、川辺に降りてひと休み。清流と赤錆びた橋のコントラストが美しい。どうせ人なんか来ないし全裸になってドボンしようと思っていたのだが、服を脱ぐや否や大量の検閲係(アブ)がブンブンとまとわりついてきたためひとジャブしてすぐ退散する羽目になった。こんなにきれいな川なのに…!!

林道は最初の数コーナーまでは快適そのものだったが、しばらく進むと徐々に化けの皮が剥がれ始める。

えげつない斜度に加えて酷いガレ。

さらに散らばる岩が薄いスレート状で刃の様に鋭利。登りとはいえ下手にタイヤサイドをハスるとザックリ致命傷をくらいそうで腰が引けてしまう。

あとはお決まりの倒木や軽めの崩落などをいくつも押し越えていく典型的な廃林道。
さらに厄介なのは川沿いから延々と付き纏ってくるアブ。虫けらどもは動物と違って怒鳴ろうが喚こうがこちらを避けてはくれないのがとにかく厄介だ。無駄とわかっていても汚い言葉が口をついて出る。
結局後半はほとんど全て押し歩いて標高1222mの峠に到着。

開けた切通の向こうにはアブの集る暗い森から打って変わって広い空と土佐の山の景色が広がる峠越えのカタルシス。乗れなかったけど、この道を来てよかった。
寒風大座礼林道
三森峠を越えた先からはしっかりしたダブルトラックに変わる。少し下って合流するのは寒風大座礼林道。ここから西の寒風山まで20km以上伸びるオフロード乗りにも有名な未舗装林道だ。

雲がデカい。広がる山を望むダイナミックな林道に、ああ遠くまで来たんだなあとようやく徐々に実感が湧いてくる。新幹線の速度には情緒がなかなか追いつけない。

岸壁を隠しきれないもこもことした山容も四国の山って感じがして新鮮だ。
さあこのまま展望よく尾根筋を進むのかと思いきやそうもいかず、

正直ツーリングマップルにコメント付きで載ってるくらいの道だからもっと走りやすいのかと思ったら、まさかの岩盤路面を走らされたりとやはり四国の山奥ともなれば一筋縄ではいかない。

かと思えばドフラットな砂利道に木のトンネルが現れたり、目まぐるしく環境の変わる林道を楽しく進む。

この寒風大座礼林道は標高1000m付近をアップダウンを繰り返して寒風トンネルのあたりまで続いており、西にそのまま突っ切ればUFOラインの入口まで走り切れるのだが、すでに日が傾き始める時間だったので中間地点の足谷からいったん標高500m付近のR194沿いまで下る。UFOラインは明日にお預け。
木の香温泉
長い谷を一気にダウンヒルしてこのあたりで唯一の入浴施設、道の駅木の香に併設された温泉へピットイン。露天風呂もあって素晴らしかったが、やはりなんといっても一番はココ。

夏、自転車旅、風呂上がり、冷えた休憩室、ボロい座布団、おっさんのいびき、ひぐらしの声。完全無欠。
おれの欲しかった全てがここにあった。
冷房直撃の畳に陣取って、身体が冷えたらもう一回風呂で温まって、を繰り返して22時の閉店ギリギリまで全力で心身を休める。こんな豪華な夏休みったらねえよな。
閉店間際に湯屋を出て、真っ暗な国道に走り出す。

ビンディングシューズはサドルバッグに不安定にくくりつけ、今日の野宿場所をのんびり探す。ああたまらない、夏の自転車旅はこの時間のためにあるのだ。
この日おれがどこで寝たのか、それはもちろん秘密。書けるわけないだろうが。
でもな、明日の朝までだけならば絶対に誰もやって来ない場所って、どんなとこでも探せばいっぱいあるんだよ。何ならちゃんと屋根までついてたぜ。
つづく
三ツ森峠
— やくも (@wartori621) August 14, 2025
別子ダム側から峠までは洒落にならんレベルのガレ・斜度・倒木・崩落でほぼ全押し。
大川村側は整ったダートですぐに寒風大座礼林道に接続。
切り通しの向こうには土佐の山が大きく開けて峠越えのカタルシスは大きかった。あとアブが多すぎて常時発狂してた。 pic.twitter.com/Yk72Mn0Y68
寒風大座礼林道
— やくも (@wartori621) August 14, 2025
小麦畝から寒風山まで標高1000m付近をアップダウンしながら東西に20km以上伸びる林道。今日は東側を真ん中の足谷まで走った。
ダイナミックな展望があったかと思えば鬱蒼とした森になったり、路面も締まったりガレたりバリエーション豊富で走っててオモロいのでおすすめ。キツイけど。 pic.twitter.com/rxVQ6X4Fuf
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