国内最強レベルの限界集落へ自転車担いで向かった記録。





水害常襲地帯だった揖斐川の治水を目的として30年以上の月日をかけて建設された国内最大の貯水量を誇る東海の水瓶、徳山ダム。

巨大なロックフィルダムに塞がれて、旧徳山村はただ一つの集落を残して尽く水底に沈んだ。

 

ダム湖に続く川沿いに唯一残されたのが今回の目的地、門入。集落への車道は全て水没し、残る陸路は険しい山道のみ。

事前にざっと調べてみたけど、旧道が崩落しているとか新しい道ができてるとか、いまいち情報が錯綜していてはっきりしたことはわからなかった。まあそれはそれで。

 

起床、出発

前日に能郷白山温見峠〜九頭竜湖〜郡上八幡を回る180kmのロングライドを堪能し、ひとっ風呂浴びた後徳山ダム近くの村の体育館裏にテント貼ってこっそり野宿。

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明け方には10℃を切り、冷え切った寝起きにカップラーメンが沁みる。うめぇ。  

寒いのが嫌なら車中泊すればいい話なんだけど、それじゃ魂が磨かれない。公共施設の裏手に貼ったテントの中でしか貯まらないカルマってのがあるんだよ。

 

ホハレ峠へ

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ガッツリ担ぎが確実なので荷物はバックパック、車体には無積載。

はじめは舗装路。急斜度でどんどん標高を上げる。

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路端に獣影。

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カモシカさんでした。

一度驚いて逃げた後、再度覗きに帰ってきた。この後も何頭か遭遇したが、カモシカって普通の鹿に比べて明らかに好奇心が強い気がする。

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頂上付近で舗装が消えた。いいぞ。

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地形図上では正面の稜線に旧ホハレ峠から門入へと続く実線、つまり軽車道があるはずだが、道はおろか踏み跡もほとんど無い。

とりあえず左の砂利道をもう少し進んでみる。

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盛り付けたセメントにぶっ刺された観音像。ジャンキーなお供え物と相まって禍々しいオーラを放っている。

どうやら一度破壊された後に補修されたものらしい。心が正しく形を成せば何をやっても許されるのか、観音の御心を真っ向から試す姿勢は感服に値する。


 

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峠から引き続き砂利道を進むと工事看板が現れた。

門入の集落まで開通させるつもりだろうか。

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山サイの全担ぎを覚悟していたもんだからこんな整ったグラベルじゃ肩透かしもいいとこだぜ…

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と思ったらほんの少し下ったところでブルドーザーが唾つけただけのフロンティアに変わる。さあ楽しくなってきた。

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今まさに切り開かれていく林道の起こり。これはこれで味がある。

ところでこの道、ここから先のあまりに急な斜面と谷の狭さを考えると門入まで開通できるとは到底思えないのだけれど、一体どういう計画なのか。だれか行ったら教えて下さい。

 

担ぎ滑落谷底へ

そんながれ道もまたすぐに消え、ここからはついに山道に分け入っての担ぎが始まる。

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ひとまず目指すは門入へ続く川の小さなダム湖。

右側に長い実線の道が見えるが、事前に収集した諸々の情報と今回横切ってみた状況から考えると間違っても軽車道ではないし、登山道であったとしてもほぼ自然に還っていると思われる。

現在は大まかに赤線で示したようなコースで登山道が開通している(というか、とりあえず赤リボンが連なっている)が、おそらく先程の林道の造成に合わせて無理やり引いたような不自然なルートで必然道の険しさも凄まじい。

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写真じゃどうにも伝わりにくいが、えげつない斜度の尾根筋を谷に向かって急降下していく。

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いま来た道。…道??

どう考えても自転車担いで通るようなルートではないが、他に選択肢もないので一歩一歩気をつけながら着実に滑落を繰り返して谷底を目指す。他に道がない以上帰りもここを通ることになるが、そんな邪念は好奇心で殺す。どうせ行くんだ、考えたって無駄さ。

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数回のガチ滑落の後、生傷だらけで谷沿いに到着。徐々に幅の広がる川を左右に渡渉を繰り返しながら進む。

はっきりとした踏み跡はないが、とりあえず川沿いに進めばつくことは間違いない。

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このあたりで両足ともに水没した。

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広い川床に出る。

突如、繰り返し渡ってきた川が伏流に変わる。

ぜひとも音を聴いてもらいたい。

目の前までザーザーと流れていた川が突如消える不思議体験。伏流自体はそれほど珍しい現象じゃないけど、ここまで極端に潜るのは初めて観た。

 

今日の装備

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ここで一息、今回の装備。

JARIの650B運用も板についてきた。WTBのVENTURE 47c、ええ感じです。

フレームバッグの中にはプチプチ。これに勝る肩当てはない。

実はハンドルバーを新調したのだが、イマイチまだ扱い方をつかめていない。すぐバンディーに戻すかも。

 

門入集落へ

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川床で集落まで行けるかと思いきや、またしても山道。

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徐々に人工物が現れ始める。いい雰囲気だ。

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担ぎ始めて2時間弱、やっと現れた轍の先、コンクリートの質素な橋をいくつか越えると…

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到着!門入集落。

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車がある。実はこの集落、冬季以外はまだ数名の住民が暮らしているそうで。

ダム湖を渡る小さなフェリーで車の往来も可能。とはいえここには船着き場から集落までのわずか数キロの一本道しか走る場所はないのだが。

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集落から少し下って静寂のダム湖畔を走る。この道もあと少し行けば水面に消える。

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舗装はまだしっかりと残っているしスノーシェッドも健在。スクーターは喰われかけてる。

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除雪車らしきものもある。これはおそらくまだ動く。

 

それにしても静かだ。

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適当なところで自転車を降り、靴を脱ぎ、荷物をおろして横になる。アスファルトが温い。

 

こんなところまで来てはみたけど、なにか特別な興味や目的があるわけでもなく、実際ろくに集落の写真も撮っていない。住民の暮らしの様子とか、森に呑まれた廃屋とか、いろいろ見どころはあるんだけど、いまいち心が向かわない。呆けてもぐもぐコンビニパンはやっぱり大して美味くもない。

 

そんなことよりこの静けさ。広い車道に寝そべって、不自然な重みが心地いいダム湖の無音に浸りながら雲を眺めてひとりまどろむ小一時間の幸福は、あの数度の滑落を勘定に入れてもまだお釣りが出る。帰路まで含めて採算に合うかは、とりあえず今は知ったこっちゃない。

 

帰路

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記憶にございません。

 

 

おしまい