【長期レビュー】GIANT DEFY ADVANCED PRO 2 初期エンデュランスディスクロードに6年乗ってみて

自転車図鑑
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TCRを買いました。 

って、Twitterで言ったらえらくうけた。

この最新機について語りたいのは山々だけど、それに伴って退役となる(と妻には伝えてあるが正直まだ決心がついていない)6年乗った相棒、GIANT DEFY ADVANCED PRO 2(2016)について総括レビューをしておこうと思います。

 

IMG 9242一言で言えば、最高のロングライドマシン。本当にいい自転車だった。

 

ざっくり中身をまとめると

DEFY 長期レビュー


    • 初期ディスクロードの「当たり」モデル
    • 乗り心地、特に振動吸収性は至高
    • D-Fuse シートポストはめちゃくちゃ効くが、大型サドルバッグとは相性悪し
    • 後から来る独特の加速感
    • ジオメトリには注意が必要(ステム位置が下げきれない可能性あり)

ちなみに最新モデルとジオメトリを比較するとこんな感じ。Compare Giant Defy Advanced Pro 2016 M 48 0 VS Giant Defy Advanced Pro 1 2022 M VS規格や仕様こそ色々と変わっていますが、リーチやスタック等基本的な設計にはほとんど変化がありません。旧モデルのレビューではありますが、現行機を検討されている方の参考になる部分も少なからずあると思います。

ほないきます。


GIANT DEFY ADVANCED PRO 2 (2016)

GIANTが誇るエンデュランスロード DEFY。

大手メーカー各社がこぞってディスクロードのラインナップをはじめたものの未だ規格が定まり切らない2016年、自身初の本格的なカーボンロードバイクとして購入したのがこのモデルでした。

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GIANTのカーボンフレームとしてはSLに次いで上から2番目となる ADVANCED PROグレード。

68世代のアルテグラにSHIMANO初の油圧STI RS685を装備してお値段32万円。当時の他メーカーと比較しても悪くないコスパだったと思います。
ちなみに2022年ver.はホイールがカーボンリム化したものの同じ機械式油圧のアルテ組で55万円、つい先日発表された2023ver.はRival eTap化して堂々の73万円です(白目)

 

初期ディスクロードとしてのDEFY

DEFYは2015年からディスクブレーキモデルが登場しました。私の2016モデルはカラーリング以外は前年度と共通なので、実質GIANT最初期のディスクロードということになります。

当時はまだディスクロードの当たり外れがメーカによって激しく、従来のリムブレーキロードの設計そのままに無理やりディスク台座を付けただけのモデルも多々あったようです。

特にロングライド界隈で有名なばるさんが自分のDEFYとほぼ同時期に購入されたSCOTTのSOLACE DISCで悪戦苦闘されていたのが印象的でした。


ディスクロードの歴史を丁寧にまとめられているこちらの記事でも、

 

恐ろしく走らないバイクでした。あらゆるパーツを交換しても改善しなかったため、一年で売却。スルーアクスルは採用していましたが、フロント15mmという後に消えた規格を採用(現在は12mmに固定されました)。

出始めの製品を買う怖さを私に教えてくれた1台です。



https://cannonball24.com/the-history-of-disc-brake-road-bike/

と評されています。

が、流石は大御所GIANT。詳しい走行感は後述しますが、初期モデルながらディスクブレーキ専用のフレーム設計で破綻のない仕上がり。
当時としては、というより(規格以外は)今でも十分通用するかなり完成度の高い「当たり」機種でした。

後日DEFYに試乗されたばるさんの

 というツイートに、「DEFY選んでてよかったぁ…」と胸を撫で下ろした記憶があります。

 

現行機との違い

前後クイックリリース&ポストマウント

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この一枚にすべてが詰まってる。

 

エンドがクイックレバー規格なんです。リアも当然QRで幅は135mm。

 

当時はまだディスクロードの規格が定まり切る前、正確には12mmスルーアクスルが覇権を制する直前(直後?)でした。
購入からわずか一年後にはアダプタ無しでQRに対応するホイールを探すのに苦労するほど急速に規格統一が進み、事実次年度のDEFYでは基本設計はそのままにエンド部のみ12mmTAに変更されています。

IMG 2344ちなみに自分は別段剛性不足や軟さを感じたことは無いですが、足回りがカッチリするに越したことは無いだろうと、前後ともRWSを導入しています。

そしてブレーキ台座はこれまたロード用では絶滅危惧種のポストマウント仕様。ここに付いているBR-R785はシマノ唯一のポストマウント対応ロード用油圧ブレーキキャリパーということになりました。

タイヤクリアランス

現行のDEFYは35cまでのクリアランスを確保しているそうですが、2016では公称28cまで。これでも当時は「ワイドなクリアランス」と謳われていました。

IMG 611128c上限に32cのグラベルキングを突っ込んだ図。
ヒゲは擦るけどなんとか使えた。フレームの塗装は剥げた。

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行きたい道に行くんだよ。文句あるか。

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あとは2019年に一度大きなモデルチェンジがあり、上記に加えてケーブルがステムに内装化されたのですが、わずか2年後の2021モデルではこっそり外装ルーティングに戻されていたりします。

 

乗車インプレ

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今でこそグラベルサイクリングが本領ですが、DEFY購入から3年ほどはそのあまりの快適走行性能の高さに惚れ込んでロングライド一辺倒になっていました。
走行距離は今まで乗ってきた自転車の中で間違いなくダントツ最長です。

DEFYの特徴を手短に言えば「めちゃくちゃ乗り心地がいい」以上終了、なんだけどもう少し細かく見ていきましょう。

抜群の振動吸収性能

一番はなんと言っても振動吸収性能の高さ。特にリアが本当に跳ねない。

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例えばこんな道。淀サイ勢にはおなじみ、関西医大裏の土手下です。

普通のロードなら腰を浮かしてガタガタと通り過ぎる凸凹のタイル路を、このDEFYはタイヤの空気圧も下げずシッティングのままトルクを抜かずにペダリングして駆け抜けることができます。
もちろんタイヤを太くしたり、サスペンションを入れたりすれば同じようなことは実現できるけど、普通のロードバイクでここを跳ねずにガシ漕ぎできるのは今のところDEFYしか知らない。

ちなみにDEFYの足回りは基本的にこの6年間ほとんど変わらずMAVICのキシリウムプロ(リム幅15c)にコンチの4000s2 25c。ワイドリムでもなければチューブレスでもない。
一昔前のTHE・ド定番的構成で、タイヤ・ホイール周辺での快適性対策は皆無。なぜなら、必要が無いから。

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たとえばアルミのグラベルロード、JARIに32cのグラベルキング(TL仕様)で同じ場所を走ってみても、より腰が浮かないのは25cのDEFYでした。

「さすがにそれはないだろう」と、何度か同じ場所で日替わり試してみたけど、やっぱりDEFYの方が確実に車体の跳ねが少なくトルクを掛けて加速できてしまいます。
まして25cのJARIなんかは乗れたもんじゃなかったのですが、それはまた別のお話。

振動吸収で最も効果を発揮しているのは独自規格のD-FUSEシートポスト

名前の通りシートポストが半月状になっており、これが大きく撓ることで路面からの突き上げを吸収してくれる。

 

見ての通り、わりとがっつり撓ります。

他メーカーではサスペンションシートポストやエラストマーを用いたショックステム等、可動機構を用いた衝撃吸収策が取られているものもありますが、D-Fuseの場合はあくまでパーツ形状のみで完結しているギミックなので滅多なことでは壊れないのもいいところ。

注意点としては、シートポスト自体が撓るという構造上、フレームからの突出量がある程度なければ機能しません。ポジションさえ合うならワンサイズ小さめのフレームを考えてみても良いかも。

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また、大型のサドルバッグを取り付けるとその重みのせいで普段と撓るタイミングが変わり、ペダリングに強めの違和感が出ます。
大したことないかと思いきや、ふとした時にけっこう気になるのでバイクパッキング的な使い方をしたい場合は要注意。
オルトリーブのサドルバッグL程度の荷物量なら全く問題なく使えます。

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あとたぶんこのリア三角もいい仕事してる。現行DEFYにも共通な極細シートステイが生む縦方向の撓りが路面の細かい凹凸に即座に反応し、D-Fuseとの相乗効果で振動吸収性と路面追従性を実現しているのだと思います。

不思議な安楽走行感

その快適性の裏返しとして、グッとトルクを掛けたときの加速感・反応性はそれほど高くありません。よく言う「背中を押されるような」感覚ではなく、あえて例えるなら「前からゴム紐で引っ張られるような」独特の加速感があります。

TCRのように踏んだ傍からガガガッと進むのではなく、トルクをかけた瞬間からワンテンポ遅れてグーッと伸びてくる感じ。

もっと自分の印象を正直に言葉にするなら、「ペダリングのトルクを連続して喰わせると、あとはロス無く勝手に走ってくれる変な生き物」の背中に乗ってるみたい。
いきなりガツンと踏んだからといって爆発的に加速するわけでもなく、逆に多少ペダリングをサボっても巡航速度が落ちない。
自分の力で自転車を走らせているというより、自分の力を利用して自転車が勝手に走っているような、そんな感覚。
楽にペダリングしているだけなのに、なぜか進む。結果、どれだけ距離を走っても脚が疲れない。
どこまでも走れてしまう。

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自分はこのDEFYの後に鉄のエクタープロトンをフルオーダーで作成しましたが、長距離を「楽に」走れるのは間違いなくカーボンDEFYです。

  どちらが乗っていて気持ちいいか?ということなら圧倒的に鉄のエクターなんだけど、それも距離が長くなるにつれて苦痛が勝ってくるので、最初の100kmエクタープロトンで気持ちよく走って残り全部をDEFYで楽にゴールを目指すってのが理想。つまり、サポートカーが要る()

 

剛性が低いわけではない(むしろ硬い)

ここまで読んでいると、「それってつまり剛性が低いのでは?」という疑問が湧いてくる方もいるかも知れません。
実は自分も最初はDEFYは柔いバイクだと思い込んでいたのですが、オーダーフレームやグラベルロードの25c化、最新のTCRなど多くの自転に乗る中で改めて考えると、実は全く柔くなく、むしろどちらかというと「硬い」部類ではないかと思っています。

加速時の反応は確かに遅いのですが、それでもペダルに入力したエネルギーが無駄にロスされている感覚はほとんどなく、同じ力で漕いだときの最終到達速度はTCRとも大差ありません(ただし、TCRにはその「先」がある)。
あまり認めたくはないけど、たぶんエクタープロトンよりも速い。
少なくとも25c化したJARIよりは間違いなく速い。DSC00041

BB周りやダウンチューブのゴツさを見ても、これで柔いってことはないだろうと思わせるボリューム感。

上りのダンシングで横に振っても変に泳ぐこと無くしっかり帰ってきてくれるし、ハードなダウンヒルでのコーナリングも変にラインが膨らむことはありません。

ふと気になってTwitterで「DEFY 硬い」で検索してみたところ、東京大阪キャノンボール最速記録保持者のHideさんも似たような事をおっしゃっていたので虎の威を借りてご紹介

そうそう、この「直進安定性」というのもDEFYの乗り心地に貢献している重要な部分。

BBが低めのジオメトリーから想像できる通り、車体が真っ直ぐ進もうとする力が強いので走行中ハンドリングをほとんどケアする必要がなく、無意識レベルの余裕が大きく増え精神的な疲労が減ることも走りの楽さにつながっています。たぶんその気になったら走りながら寝れる。

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ジオメトリの注意点

DEFY(のみならず多くのエンデュランスロード)最大の欠点、それは長過ぎるヘッドチューブによるスタックの高さ。

DEFY vs TCR スタックハイト比較
  • TCR   ー 545mm
  • DEFY ー 567mm

同サイズのTCRと比較して、スタックが20mm近く高いことになります。つまり、ステム位置の下限が2cm高い。

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左がDEFY、右がTCR

ほぼ同じハンドルの高さにしていますが、DEFYはステム位置を目一杯下げさらに-17°のステムに変更。対してTCRはまだ数枚スペーサーを残しています。

エンデュランスロードの売り文句の一つに「アップライトなポジションがとれる」というものがありますが、個人的にはロングライドでもある程度ハンドルを下げて前傾姿勢を取った方が荷重が分散されて具合がいいと思っています。

しかしDEFYに付属してくる純正ステムでは下限いっぱいまで下げてもベストな位置にできず、仕方なく−17°のステムを買ってなんとか理想のポジションを取ることができるようになりました。

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SHIMANO PRO VIBE ステム -17° 

GIANTはヘッドチューブがOD2という太めの独自規格のため対応するステムはごく僅か。
特に手が長い人などは一度試乗してみて理想のポジションが出せるかどうか確認したほうがよさそう。

あとがき

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本当に「距離を稼げる」バイク。

ずば抜けた振動吸収性や安定性はライド中自転車の操作に割く意識の割合を下げ、長時間の走行で蓄積する精神的な負荷をも大きく低減させてくれます。
乗ってる最中もさることながら、長距離走った後の疲労の少なさも特筆モノ。
乗り味の癖は強いけど、「長距離を楽に走る」という目的ならこれ以上のものは無いと胸を張っておすすめできる自転車です。

パーツ構成とかパッキング事例とか、まだまだ書きたいことはあるんだけど長くなってきたので一旦ここまで。気が向いたらつづく、かも。





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