サイクリストよ、全地形的活動をー 【自転車図鑑】柳サイクル JAGER (イェーガー)【59台目】

自転車図鑑

ついにこの自転車を紹介できる日が来た。

柳サイクル JAGER(イェーガー)

きゃんつー集いの主宰にして全地形的活動家、醍醐漫氏の得物。そう、「得物」という言葉がこれほどふさわしい自転車は他にない。

この自転車を正しく鑑賞するためには、まず彼のサイクリストとしての活動風景を知る必要がある。

乗り手 : 醍醐漫 DAIGO-GEAR@penassos

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引用 : https://twitter.com/penassos/status/1689299021725413376/photo/1



弊ブログの読者には今更だろうが、今この写真を見て頭に大きなハテナが浮かんでいる健全な諸兄のために少し解説しておこう。

世の中には自転車を担いで山に登ることを是とし、あまつさえそれを「サイクリング」と称して憚らない頑健な一派が存在する。「山岳サイクリング」と呼ばれるこの活動の歴史は古く、日本では山岳サイクリング研究会、所謂「山サイ研」がその筆頭集団として知られ、魑魅魍魎が跋扈する自転車界においても随一の魔境として多くのサイクリストから畏敬の念を集めている。

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彼はそんな山サイ研の最年少メンバーの一人であり、日本の名だたる峠を自転車担いで踏破する姿は自分も含め多くのサイクリストが影響を受けている。

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また山サイだけにとどまらず、日本縦断やオーストラリア横断、アイスランドグラベル旅等、世界を股にかけたキャンプツーリングにも挑む、筋金入りのサイクルツーリストでもある。

そんな彼がフルオーダーした愛車がタダモノであるはずがない。じっくり見ていこう。

柳サイクル JAGER (イェーガー)

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上述した彼の全地形的行動を支える自転車、その有り様はもはや「乗り物」という概念に包括できるものではなく、彼自身の言葉を借りるなら『何かを攻略するための武器』であり、その意味ではむしろ探検家にとっての「手斧」や「鉈」に近い。

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制作は千葉県は鎌ケ谷、柳サイクル

乗り手の求めるサイクリングの形に合わせてロードやグラベルといった枠に収まらない唯一無二の自転車を数多く生み出してきた、個人的にも今ダントツで気になっているフレームビルダーだ。

このJAGERの制作過程はジオメトリからパイプ選定、溶接の過程までビルダー直々にその詳細を残してくださっているので是非一読して欲しい。めちゃくちゃ勉強になる。

自転車フレーム製造・販売 柳サイクル
千葉県鎌ケ谷市にて、オーダーメイドで自転車フレームの製造及び販売を行っています。またスポーツ車から一般車まで修理、メンテナンス、カスタムなどお気軽にお問い合わせください!


 

JAGER 旅装概覧

このJAGERに定型は無い。目指す道に応じてその装いは如何様にも変わりうる。草案では20インチも候補にあったというのだから驚きだ。

彼のブログにフレーム設計のねらい等も書かれているので、こちらも要チェック。
柳サイクル イェーガーについて | 単身双輪


今回のきゃんつー集いの実装を見る前に、これまでの彼の旅装をいくつかおさらいしておこう。

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アイスランドツーリングでのフロントパニア仕様



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ワカン装備の雪中行軍スタイル https://twitter.com/penassos/status/1489169135749632003?ref_src=twsrc%5Etfw



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担ぎの取り回しやすさを狙った24インチ山賊仕様 https://twitter.com/penassos/status/1074957904992600064/photo/1



ホイールサイズだけ見ても上は700cから下は24インチ(!)まで、バーサタイルの極みである。

 

フレーム&フォーク

フレーム

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一見して目を引くのはシートチューブにかけて僅かにベンドされたトップチューブ。

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引用:https://twitter.com/penassos/status/1237359046270697475/photo/3



山での担ぎの際に肩がフィットすることに加えて、車体の角度を安定させる役割もありそう。

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ちょうど対角のダウンチューブにも養生が巻かれている。アウターケーブルが肩に当たらないようトップチューブの上部を通るところもポイント。

肩に担ぐだけではなく、前三角に頭を通して両肩で支えることで両手をフリーにしたりと、状況に応じた様々な担ぎ方がある。

ちなみにフレームにはオフロード用バイクとしては薄めのパイプが使用されているらしい。剛性と軽量性のさじ加減、オーダーバイクの醍醐味だ。

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いたるところに歴戦の証。この武器に、刃こぼれはない。

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ヘッドチューブはフロント積載でのオフロードも安心な大径のテーパードコラム。

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リアエンドはこちらも剛性重視でスルーアクスルを採用。ロゴも消え失せた7速のRDとの美しい時代錯誤だ。

 

フォーク : SURLY MIDNIGHT SPECIAL

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この日はJAGER純正フォークではなくSURLY ミッドナイトスペシャルのフォークをアッセンブル。

制作段階では100mmサスの投入も想定されていたそう。

 

パーツ構成

ドライブトレイン : SHIMANO XT FC-M785 / RD-6500 7S

DSC07675 EDIT 様々なドライブトレインを地形や乗り方に合わせて使い分ける。時にシングル、またはディングル、今日は7速。

サムシフター : SHIMANO DEORE XT SL-M700

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発売は1982年、初代DEORE XTのサムシフター。

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当時の22mmハンドル幅仕様ではクランプ径が合わないので別のアダプターをキメラしているが、これでも実は合ってない。合ってはないが、使えるのなら何も問題はない。

ホイール&タイヤ : MAVIC ALLROAD / SOMA CAZADERO 650B x 42mm

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足回りは現代的なMAVIC オールロード。このSOMAのタイヤがかなり良いそうです。気になる。

 

フロント積載 : DAIGO-GEAR サブザック

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今回のきゃんつー集いでのメイン装備、旧mont-bellロゴのベルトでハンドルに固定されているのは彼お手性のサブザック。


必要なギアがあれば自作する。

ガレージメーカー DAIGO-GEARとしても活動する彼の多彩な才能が発揮されている。モノ作れる人って本当に凄いよなぁ…

 

リア装備 : サイスポ付録ベルト

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この上なくシンプルなリア積載は輪行袋とマットをサイスポ付録のストラップで固定する最小限の構成。これでいいなら、これでいい。

先代 : 柳サイクル HUNTER

実はこのJAGERは彼にとって2台目のオーダーバイク。1台目はというと、

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こちら。同じく柳サイクル HUNTER。現在も楓@kaede8264 さんの元でバリバリ現役。

所謂「パスハンター」と呼ばれるタイプの自転車で、マディフォックスやこのHUNTERでのサイクリングを経て、今のJAGERに至る。

この一台だけでも山程語るところはありそうだけど、長くなるので詳細は柳サイクルのブログを確認されたし。
パスハンター
昨年暮れに製作した、パスハンターです。パスハントというと峠越え。通常のロードツーリングに飽きた、よりアドベンチャーとか探検的な、というマニアックなイメージがありますが、確かにそうですね。ただ、舗装路を走って、時には林道を走って、山の向こう側に行くために、舗装された迂回路をぐるっ、と回ってか、、というときに、ちょっとした...


 

あとがき

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類まれなる強固な信念を持つ乗り手と、それを具現化する確かな腕を持ったビルダーから生まれた最強の狩人。

今まで数多くの自転車を見てきたけど、これほど乗り手の思想が凝縮・体現されたものはない。彼のサイクリングに対するある種狂信的なまでの熱量がそのまま二輪を纏ったような、凄まじい一台だった。

自分もいつかこんな一台が作れたらなあ…

 

また次の集いで。

追記: R.I.P

画像

2024年6月19日、トップチューブ破断により天寿を全うされたそう。

最高にかっこいい自転車だった。

 

おしまい

 

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