豪雨、雷鳴、権兵衛峠【きゃんつー集い2024】

サイクリング

きゃんつー集い2024、前回からの続き

中山道サイクリング 鳥居峠・牛首峠・林道桑崎線 【きゃんつー集い2024】

集いの朝

集い2日目の朝。目を開けると緑のテントの中。数秒のフリーズ、伸びをしてリブート。

暑くもなく、寒くもなく、爽やかな空気。そう言えばエアコンの効いてないところで寝るのいつぶりだ…?

モゾモゾと寝ぐらから這い出すとすでに朝食の準備に取りかかる者もあり、まだタープの下で爆睡中の者もあり。

薄ぼんやりとした頭で朝飯を準備(湯を沸かしてトウモロコシ焼くだけ)しながら、ゆっくり自分の体調を探る。前日は水を被り続けながら走ったおかげで暑さによる残存ダメージはなく、久々のテント泊もぐっすり寝れたおかげで身体に変な強張りもない。まったくもってニュートラル。これならがっつり走れそうだ。


雑談しながらパッキングを整え、出発に向けてボルテージが徐々に高まっていく。全員での集合写真を撮り終えて、各々好きなタイミングで解散。

展望台へ

その後一部のメンバーでキャンプ場近くの展望台まで一緒に向かった。


こういうわちゃわちゃ、サイクリングクラブ時代に戻ったみたいでめっちゃ楽しい。

展望台の下で皆に別れを告げて、いよいよ2日目の行動開始。あばよ!また来年!!

小野峠から諏訪湖へ

みなと別れてすぐ、小野峠へと続く林道に突っ込めば初っ端から道を塞ぐ大倒木。


そのまま諏訪湖方面へ急なグラベルを下っていくと路面が徐々に草に埋もれだし、やがて腰までうもれ、ついに森に吞まれた。


開始10分でこれは笑うしか無いが、谷の先には復活した道が見えているので突破一択。おりゃあ。

短いながらもパンチの効いた廃道を下って諏訪湖畔まで出てきた。ここから先はしばらく街中を南下し、次の峠を目指す。


湖沿いにはきれいなサイクリングロードができていて走りやすい。

6年前、グラベル第三帝国との邂逅

諏訪湖と言えば思い出すのは6年前の秋。あのとき自分は友人の結婚式で長野へ来たついでに乗鞍や美ヶ原を巡るサイクリングを終えて、諏訪湖畔にいた。ふとTwitterを見ると、たまにTLで見かけるガラの悪そうなサイクリストたちがその日近くのグラベルを走っていたことを知る。当時はほとんど絡みもなかったし、普段ならそんなことしないんだけど、いきおいDMを送り付け、ライド後の食事中に乱入していったのだ。

そう、実は自分が悪友モリビトやどんちゃんたち、つまりグラベル第三帝国との邂逅を果たしたのは、地元京都を遠く離れたこの諏訪湖近郊だったのである。

大学を卒業して以降、基本ずっと一人でサイクリングをしていたのに、この出会いの一か月後には琵琶湖の見えないデスビワイチをわいのわいのとやってたんだから、人生わからないものである。


ビワイチ中です。信じてください。

杖突峠〜金沢峠

そんなことに思いをめぐらせながら市街地を抜け、杖突峠へと差しかかる。

ここからは標高1500mを超える金沢峠まで、舗装路で15kmほど淡々と上る。いや、さんずいが邪魔だな。晴れた空からの日差しが炎にまかれたように熱い。流れ出る汗をボトルの水で薄めながらえっちらほっちら登っていくと、ひとまず杖突峠にたどり着いた。

時刻は昼前、峠にはちょうど蕎麦屋があったので迷わずピットイン。ようやく一息クールダウンできるかと思いきや、なんてこったこの店、冷房がねえ!

標高1300m、確かに絶対的な気温はそれほど高くない。入り口の扉は開けっぱなしで大展望を望む窓は半分網戸。おそらく普通ならこれでちょうどいいのだろう。

仕方ない、冷たい水を飲んで微かな風を浴びながら汗の気化熱で身体が徐々に冷えるのを待とう、と思った矢先、店員さんが持ってきてくれたのは熱々のお茶!!!!

ここが京都なら明確な宣戦布告だが(「やあそんな一所懸命で、わざわざ麓(した)からきてくれはったんどすか??」)、地元の高校生と思しき初々しい店員さんの所作には僅かの悪意も感じられないので、丁寧にお願いしてお冷をいただく。


ちなみにそばは絶品だった。なにより嬉しかったのは塩! サプリだタブレットだなんだといっても、結局これが一番効くんだよな、と一粒も逃さず全部舐め喰らい、当然つゆまで全部飲む。今日出る汗の塩分を全部ここで積んでいく。ソルトローディングはばっちりだ。

町道高峰線ロンググラベル

杖突峠からは突如現れたゴルフ場の周囲を巻くように多少のアップダウンをいれながら金沢峠を目指す。(ソーラパネルとゴルフ場、サイクリング途中に出くわしたくないものの双璧よな。)

金沢峠からは南に町道高峰線が伸びており、ツーリングマップル曰く17kmの未舗装路だそうで。


峠の頂上までの林道は通行止め。あまり見かけない挑発的な物言いに「おれの愛車は普通じゃねえ!!」と突破することもやぶさかではなかったが、目指す方向は逆だったので今回は見逃してやる。


本命の町道高嶺線、こちらも時間制限で通行止めの看板があるが、この日は日曜で休工日だったためこの先にあった車止めも開放されており、普通に通れる。


全体的に路面は砂利を土で固めた極上なフラットダート。緩やかな下り基調ということもあってキャンツー装備でも快速で飛ばせる爽快なグラベルに俄然勢いづく。



標高も高く風も爽やか、「信州のグラベル」に欲しかった要素が全部詰まっている。ひゃっほーい!


あっという間にオール未舗装で12kmほどを走り抜けた。このまま接続する国道まで突っ切れば何も問題はないんだけど、走りながら頭の片隅には事前に見ていた地形図の断片映像がこびりついて離れない。


金沢峠からここまで12km走って300mしか下ってないのに、この支線林道はおよそ3kmで450mダウン。なんじゃそら。

ひとまず入り口の様子だけでも見てみると…

IMG_2030 EDIT.
左の木陰に消えゆく轍がおわかりいただけるだろうか…

明らかにろくでもない気配がしているが、自分の内なる声に耳を傾けると「ギリ行ける」って言ってる。こいつを無視すると後からグチグチうるさいので仕方なく谷底へと舵を切った。


いきなり朽ち果てた倒木を担ぎ越えた時点である程度覚悟していたが、それにしてもハードな下りだった。


無秩序に転がる拳大の岩が豊かな緑に隠されてライン取りすらおぼつかない土の斜面は、しかし斜度が20%を超えているため迷っている時間的余裕はない。ブレーキを下ハンで握り、日頃の行いを天に開陳しながらカルマの坂を下る。


そんなさなかに綺麗な骸。角がスッパリと切断されていたので、すくなくとも人の往来はあるようだ。…猟師じゃねえだろうな。「通るぞー!!!!」と谷底へ叫んで、さらに下っていく。

何度かごろ岩にキツくハスったが、無事ノーパンクで集落まで下りきることができた。どうやらちゃんと善行を積めていたらしい。

伊那市街から権兵衛峠へ


天竜川を中心に広がるすり鉢状の広い谷を伊那の街にむけて下る。幹線道路を軽快に下っていると、途中何度も熱風の壁にぶつかる。自転車乗りなら皆経験があると思うが、あるところを境に突如熱を帯びた空気の塊に突っ込んでいくあの不快な感覚を何度も味わいながら伊那の街にたどり着いたころには、路肩の電光掲示板が35℃を示していた。しばくぞ。

権兵衛峠旧道越え

伊那市街を抜け天竜川を渡ると、今日のラスボス権兵衛峠に向けておよそ18km 1000mUP、最後の上りが始まる。


傾きながらも未だ勢いの衰えない日に顔を焼かれながら、谷底「平野」とは名ばかりの坂道を西へ向かってまっすぐに登る。谷底平野の終わりまで来てようやく新道との並走を終え、静かな旧道へと分け入っていく頃には近づいた山の向こうに日が隠れ一気に暗さが増す。いい雰囲気になってきた。さあここからだ。


すでに山を越える役目は新道のトンネルに奪われ、長年補修も整備もされていないほんまもんの旧道。どこで崩落して道が途切れていても不思議はなく、峠までたどり着ける保証は本当にどこにもない。

そんな道を日暮れも間近に10km近く登ろうなどという気力が、30も半ばになってどこから湧いてくるのか正直自分でもよくわかってない。


ただ、こんな道を、今や道と森のあやふやな境界線と成り果てたような廃道を、たった一人でゆっくりゆっくり登っていく、こういう時間が、おれには要る。それははっきりと理解る。

自分に必要なものがあって、それが何かわかってて、それを取りに行く気力があって、いままさに手に収めてる。今日の飯すら狩れなくなったおれたちに残された数少ない幸福の掴み方としては、わりといい線いってる方だろう。

廃道は続く。


続いてない?


いや、続く。

この程度の土砂崩れなら明るいうちは大したこと無いのだが、問題は終盤で突破不能な大崩落あった場合。頂上近くからの撤退戦は間違いなく日が暮れる。夜闇の中で再びこの土砂を担ぎ越えるのは、流石に勘弁願いたい。


そんな厄介ゾーンが一箇所や二箇所じゃない。一つ崩落を越えるたびに、撤退時のリスクも高まる。

なので、仮に大崩落がなかったとしても、最初の崩落地点を完全な暗闇になる前に担ぎ戻れるだけの時間的余裕をもって撤退の判断を下さなければならない。


なんてことも頭の片隅では考えつつ、そんな冷静さより遥か深いところから湧くエネルギーを燃やして眼の前の崩落を越えていく。

豪雨、雷鳴、権兵衛峠

そしていよいよ、感覚的に「この先で引き返すことになったらもう真っ暗闇は確定かな」という分水嶺まで来たとき、あの大好きな音が轟いた。



ボリュームを上げて心ゆくまで聴け。(ラストに辛抱堪らずHOO!ってるから耳塞げ)

2時間近く乗り押し担いだ廃道峠の最終盤を彩る祝砲。

そして雷鳴だけじゃない、耳をすませば遠くに聞こえる滝のような雨音が、徐々に、大きく、ほら、もう、すぐ、弾着、今!!

初滴から極上の大粒を叩きつけながら、お待ちかねの大嵐がやってきた。上から横から稲光と同時に腹まで響く雷轟。負けじと絶叫を返すも、雨音にすら敵わない。ああ怪獣になりたい!!今すぐでっかい怪獣になって、あの雷を喰いたい!!!

そんな雄叫び上げながら無心でペダルを回していたら、いつの間にか峠を越えていたらしい。いつの間にか下りになり、ゲートが現れ、そして綺麗な舗装路に合流した。雨はまだ止まない。


峠を越えた直後に撮った一枚。サイクリング中の自撮りとしては過去最高に気に入ってる。でも顔まで入れてちゃんと撮らなかったことを本気で後悔もしてる。めちゃくちゃいい顔してたはず。

豪雨、雷鳴、品又峠

なんのめぐり合わせか知らないが、去年の集い2日目のサイクリングでもいい雷雨に出会えたんだった。

【きゃんつー集い】DAY2 豪雨、雷鳴、品又峠
きゃんつー集いの朝、交流もそこそこに皆またそれぞれの旅へ。品又峠出会った雷雨が、この日のサイクリングを完成させた。


2年続けてこれとは、あまりに恵まれすぎている。まさに僥倖。ありがてぇ…

しなの、運休

権兵衛峠を下り、木曽の谷へ下り、昨日出発した木曽福島駅に着いた頃には日はとっくに暮れ真っ暗になっていた。

時間ギリギリの特急しなのに滑り込むべく大急ぎで輪行の荷造りをし(実はここで素敵な出会いがあったのだが、それはまた後日)、改札に向かうと…


特急しなの、運休!!

結局鈍行で名古屋までとっぷり時間を使い、家に辿り着いたのは日をまたいでからだった。

おしまい

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