【レビュー】携帯用チェーンカッター ノグチ YC-285

レビュー

先日のサイクリングで誠に遺憾ながら遂に実戦デビューを果たしてしまったノグチの携帯用チェーンカッターをレビューする。せめて誰かの糧となれ。


概観

ピンのスクリュー機構と保持用ハンドルが折りたたみ式になった小ぶりなジッポライターのような形状。


4・5・6mmの六角と+ドライバーを両端にした2本の短いレンチがセットで付属する。


重量は2本のレンチを合わせて81g、本体だけで52g。
が、自分の場合六角やドライバーはPB SWISSのバイクツールキットを愛用しているので、実際はレンチを除いた状態でツールボトルに入れている。


対応変速数


公式に何速まで対応かの記載がないのでわからないが、自分の実績としては現場で11速、家で9速を切れた。

12速は実際に切ってはいないけど、81アルテのTCRに当ててみた感じちょっと遊びが大きい気がする。切れなくはないと思うけど、11速に比べると下手こいて斜めにインサートする可能性が高そう。あとはシングルスピード用の厚歯も問題なくセットできたので、実際出先で使う可能性があるかどうかは別として問題なく使えると思う。

使用感

実際のメカトラ現場でチェーンを切って繋いで3回使った。やりたくなかったけど、やらざるを得なかったのに、やった意味はなかった。ちくしょう。


それはともかく、初めての使用でチェーンの切断/接続それぞれ3回やって3回成功。しかも後2回は交換用の新品ではなく、禁忌のアンプルピン再利用という比較的難度の高い接続方法。2本の前足を器用に使っている程度の自分でもこれらの作業を完遂できたので、携帯用のチェーンカッターとしての機能性は必要十二分。


使用時はL字に開いて黒い部分をグリップ代わりに持って力一杯ねじ込む。こんなに思いっきりやって大丈夫かな?と思うくらいの力をかけないとピン押し出すことはできない。自分の場合はPB SWISSの長め(というほど長くもないが)のレンチを使っているためなんとかなるけど、ミニチェーンカッター付属の4mmではかなり厳しい。おそらく握力の弱いひとが多少なりともパニクってるメカトラの現場でいきなりやるのは無理だと思うので、導入前にテストは必須。

「ディレイラーが壊れたらシングル化」の罠

自分も長らく走行中のディレイラーorエンド破損の際にはチェーンラインを合わせて仮想シングル化して急場を凌ぐという応急処置が定石だと思っていたが、それもすでに時代遅れの感覚だったようだ。


TKCさんの一連のツイートが詳しいので必読。

先のメカトラ黙示録でも取り上げた通り、リアディレイラーを廃してシングル化しても勝手にロー寄りにシフトダウンし、チェーンがスタックし走れないという状態になる。

メカトラ黙示録ー天生峠闇中行軍
前回からの続き「あああ?????え???????あ!ん??え??あ、そ…???は??」 「いやいやいや、いや、これは、え?なに?折れ…あ、ディレイ…巻き込…なにこれは?なに???パンク???なんで????」「あーエンド…...


変速性能向上のために設けられたスプロケの変速点をチェーンが通過する際の僅かな振動や傾きでRDがなくても勝手に変速してしまう。さらにリア変速の多段化=クロスレシオ化によって隣接するギアの歯数差が減っていることも原因か。

一昔前、大学のサイクリング部時代には9速のMTBでシングル化した際にはそれほどペダリングにシビアにならずにかなりの距離を走ったし、11速でも走行を継続可能な例もあったので様々な要素が絡み合っているとは思うけど、多段化・高性能化を押し進めるとメカトラのような異常事態での冗長性、継戦性は今後ますます失われていくんだろうな…

あとがき


そもそもの話、破壊即走行不能なディレイラーを地面スレスレに吊って走る外装変速って機構自体があまりにもリスキーなんよな。

かつて欧州自転車野宿旅の途中、ドイツのミュンヘン近くで出会ったサイクリストの言葉を思い出す。
「おれに言わせりゃ外装変速なんて拭いても取れねぇクソぶら下げて走るようなもんだ」
It’s just like hanging a piece of sxxt!”
と息巻いていた彼はRohloffの内装変速を備えたツーリングバイクでヨーロッパを巡っていた。



使い勝手を聞いてみたところその堅牢性やシンプルさを熱心に力説してくれて、なるほどそういう選択肢もあるのかと驚いたが、かれこれ10年以上経っても未だ世界は彼に追いついてないようで。

内装変速かギアボックスかは知らないけれど、新たな機構を引っ提げて外装変速(或いはShimano)の牙城を崩す新興勢力が現れるのはいつになるかな。

おしまい



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