【四国自転車野宿旅】UFOライン&四国カルスト【DAY2】

サイクリング
前回からの続き

【四国自転車野宿旅】三ツ森峠ー寒風大座礼林道【DAY1】
夏、久しぶりに2泊3日の出撃許可が下り、四国のUFOラインやカルストの界隈をめぐるツーリングへと出かけた。 当初8月10日〜12日で計画していた旅程はしかし、九州地方に大きな被害を出したこの夏初めての長雨がものの見事にダダ被り...

起床

3時頃から走り出してUFOラインで日の出でも拝むか、起きれたら。なんて気持ちで寝落ちして、ふと目が冷めるとぼんやり明るい緑の天幕。時計は4時半、まあこれはこれで。

前日闇夜に見つけた寝床。薄明かりの中テントから這い出て、初めて周囲の詳しい状況を把握する。おお、思ったより人の気配あったな。もちろん一晩誰も来なかったし、結果オーライだ。


サクッと湯を沸かして昨日出発時に買いだめした辛ラーメンを作る。箸がなかったのでそこら辺の枝。念の為軽くバーナーで炙ったが、中に虫とかいたら知らん。

湯を沸かすのと同時並行でテントや寝袋の撤収作業を済ませておき、メシを食ったらすぐ出発。この日おれがここで寝たことを知るものは、おそらく一人もいるまいて。

UFOライン


R194からこれから挑む寒風山を眺める。

ここから標高1700m弱のUFOライン最高地点までおよそ20kmで1000mアップ。一息でこれだけ登るのはいつぶりだろうか。関西にいるとなかなか一気に1000アップってないんだよな。

まずは大きなつづら折りで標高1100m付近の寒風山隧道のあたりまで急登。昨日走ってきた寒風大座礼林道の西側の分岐を越えたすぐ先に、UFOライン入口の看板があった。


お盆ということもあって昼間はこの駐車場もいっぱいになるらしいが、流石に7時前では閑散としている。

出だしこそ霧っぽかったがこのあたりから空は快晴。これなら展望も期待できそうだ。


ゲートを越えて、いざ石鎚山系の稜線を目指す。


ダイナミックなぶち抜き岩盤。やっぱこういうのが出てくるとテンション上がるな。


しばらく走ると森林限界を迎えた稜線が姿を表した。

登りながら、そういえば信州じゃ森林限界は2500mとかそのへんだった気がするけど、なんでこのあたりは低いんだろうか、というかあれはそもそも森林限界なのか?

なんてことを考えていたのだが、今ちらっと調べてみると

四国の一部山岳地域には,気温環境に規定された「森林限界」は存在しないはずにも関わらず,本州中部山岳地などで認められる木本の生育限界(森林限界)に極めて酷似した「疑似森林限界」が広がっている。この植生景観の成因には,自然条件に加え人間活動の影響も関与している可能性があるが,双方の観点から総合的に研究された事例がないため,変遷史に関しても未だ解明には至っていない。

とのこと。なかなか複雑そうだ。

淡々とペダルを回し、徐々に稜線へと近づいていく。

斜度はそれなりにあるが、キツいところでも10%程度といったところ。この程度くらいまでなら、キャンツー装備の重さは不思議とそれほど負担に感じない。ゆっくりくるくるインナーローで無心で登ると…


やあ、絶景哉。

SNSで何度も見かけた光景ではあるが、実際に自分の足でここまで来ると、流れる汗と冷やす風、相変わらず鋭い日差し、不思議と重い静けさ、そして青い葉の匂い、全てが渾然一体として肉体に刻まれていく。

ただまあ、なんというか、やっぱり自分は絶景見たさで自転車に乗ってるわけではないんだよな、とも思う。だって雨でも来ようとしてたし、たとえこの景色が水滴と灰色の虚無でも同じくらい楽しめただろうから。これが本当のノー天気ってやつだ。


展望ポイントでのんびりしていたら時刻は9時を回り、それまでほとんど見かけなかった車やバイクが徐々に増えてきた。

どうやらこの日も昼には渋滞ができるほど混んだそうで、そうなると風情もへったくれもあったもんじゃない。やはり有名どころに行くなら早朝に限る。


そのまま西の石鎚山スカイラインへと下る。

r12との合流地点には立派な山小屋と大きな駐車場があり、ビシッとレーパンで決めたイケてるロード乗りのグループがあちこちで輪を作っている。そりゃこんないい山あったらみんな来るよな、羨ましい。

その後も面河に向けてせっかく登った標高を1000m以上吐き出しながらどんどん下る。

途中きつい坂道を登るどこかのサイクリングクラブらしき一行とすれ違う。「頑張れよぅー!!」とめいいっぱい叫んだが、下りでがっつりスピードに乗ったタイミングだったから謎の絶叫とともに視界から消える不審者でしかなかっただろうな。

四国カルストへ

途中昼食を挟んだが、予想外にいいペース。下りに下ってこの日の底、標高270mの柳谷大橋までやってきた。

さあ問題はここからだ。当初の予定ではこのままもう少し行ったところで寝床を探して明日カルストへと思っていたが、今の時間からなら日没前には辿り着けそうだ。

だが、そのためにはUFOラインからここまでまるまる1500m近く下げた標高を、再び1200mちょっと上り返さなければならない。行けるか…?行くか…。


下ってきた谷筋をループ橋で登り返してゆく。目指せ、カルストへ。


福地蔵の湧水

日本屈指のノンミネラルウォーターは圧巻の硬度7。7て。

手で掬って飲めば舌あたりが「無」の冷たいなにかが口から喉へ滑り落ちていった。美味いとか不味いとかはなにもない。無。なんじゃこれ。
ボトル3本、約2.3Lを満タンに補充。ここからの長い登りを考えれば軽装で臨みたいところだが、酷暑の夏には2キロそこらの軽量化よりたっぷり浴びれる冷たい水のほうが遥かに価値がある。
なのでもちろん浴びてからいく。頭からつま先までボトボトに。どうせすぐに乾くんだから。

カルストへは西側の地芳峠から登るルートが一般的だが、時間が昼過ぎということもあり麓で出会ったライダーに聞けば、渋滞が酷すぎてエグい坂の途中で何度も足止めを喰らい、やってられないから引き返してきたとのこと。


そんなこともあろうかと目星をつけておいたのは東側からカルストを攻める林道天狗高原休場線。

西側と打って変わって車の往来はほとんどない。なぜかって、キツイからさ、アホほど。


このカルストまでの登りが今回の旅で一番キツかった。およそ12kmで1000UP、ざっくり言えば「2花脊」って感じ。

ここに限らず、サイクリング中に現れるきつい峠は全て京都の花脊峠を単位にしてイメージしている。自分の場合、「1花脊」とは空身のロードバイクでゼエゼエ言いながら必死に漕いでおよそ30分500mUPくらいのイメージだ。

それをキャンツーフル装備で2回繰り返す。めちゃくちゃきついが、こうして既知の峠をベンチマークにすることで先の見えない苦しさを和らげることができる。
カルストの展望ゾーンにたどり着くと、はじめはガスってて展望はないが青空も覗いているのでそのうち晴れるだろうと最高地点を目指す。


自転車のみ東から西へ一方通行の遊歩道が最終最後にして最大斜度。たぶん20%は越えてた。

どうにか最後の力を振り絞り台地に登り、到着、四国カルスト!



ひゃー、いい景色。いつの間にか傾いた日が牧歌的な風景に拍車をかけている。



なるほどさすが「手軽に行けるアルプス」と言われるだけあってとても日本とは思えない光景にテンションが上がる。でも、おれの脳裏にこびりついてるあの夏のスイスアルプスはこんなもんじゃなかったぞ、なんて無粋なマウントが脳裏に過ぎる。

青年期の埒外の幸福は生涯の糧にもなるが、同時に呪いにもなるんだよな。厄介だぜ。



西へ向かって下り、ぎゅうぎゅう詰めのテントで埋まったキャンプ場の辺りから振り向くと夕陽に染まるカルストを一望できる。日没までにここまで来れてよかった。

その後沈む日と競う様に地芳峠から南の梼原(ゆすはら)の街へとまた1000m以上のダウンヒル。登ったり下ったり忙しい日だ。

明日松山へ向かうことを思えば南へ下るのは逆方向なのだが、風呂が梼原にしかないんだから仕方ない。これだけ走った1日の最後に風呂が無いなんて締まらない。

すっかり暗くなった頃無事梼原の道の駅に併設された温泉へ辿り着き、しっかり汗を流した後、また昨日と同じくここには書けないところで寝た。我ながらいい寝床だった。

おしまい

コメント

タイトルとURLをコピーしました