寒波襲来 奈良最奥の山小屋サイクリング

サイクリング

おれが自由だから寒波が来たのか、寒波が来たからおれが自由なのか、因果の矢印は知らないが少し遅れた冬休みとして妻からもらった一泊二日の自由な休日を狙い澄まして冬将軍がやってきた。

https://tenki.jp/amp/forecaster/r_fukutomi/2026/01/11/37362.html

前線の通過は昼から午後にかけて。前日はやけに暖かく、大阪の家を朝5時に出た頃はまだ気温は11℃もあったのだが、この日の予報は日本全国どこもかしこも最高気温を午前0時に記録して、あとはどこまでも下がり続ける典型的な冬の嵐。

雪で道が塞がれてはたまらないので、朝も早よから北西からの風に車を乗せてR169をひたすら南下し下北山村に到着。

eTrexのマウントを忘れた、の中指。この時点で気温は4℃。

数時間後にはこのあたりの上空1500m帯にも−6〜−8℃の寒気が前線と共にやってくる。これから目指す林道がちょうど標高1000mあたりなので間違いなく氷点は割ってくるだろうと持てる最高の防寒着を全投入し、以下の通りのウェア構成に。

林道に入って標高を上げるとすぐに雪が舞い始めた。

前線本体の通過はまだしばらく後のはずだが、それでも時折りものすごい風が吹く。斜度のキツさに比べてペダリングがえらく楽だなと思っていたら、谷の方角が幸いして凄まじい追い風に押し上げられていただけだった。よく見れば雪が下から上にから噴き上がっている。

ずっと追い風なら言うこと無いがもちろんそんなわけにも行かず、ふと気を抜いた瞬間横風にハンドルを取られたり、斜度がキツくなって立ちあがった瞬間突風を浴びて足をついたり。

 


 

標高700mを超えたあたりで車止めのゲートに行き当たった。舗装路が終わり、いよいよ本命の未舗装路がはじまる。

古代グラベル語で「気をつけていってらっしゃい!」と書いてあります。

凍てついた砂利道が舞い落ちる雪を乗せたままタイヤに踏まれてパキパキと乾いた音を立てている。

徐々に強風のインターバルが短くなり、標高1000mの尾根筋にたどり着いたときには自転車を漕ぎ出すことすらできない間断のない暴風が吹き荒れていた。あまりの風の冷たさに顔が痛い。

とはいえここまでかなり登ってきたので水分補給にとボトルに口をつければ、飲み口から水がほとんど出てこない。

なんてこったい。

気温は−5℃前後だろうか。加えて10m/sは優に超えるであろう風がみるみる体温を奪っていく。急いで反対側へ降ろうにも風の勢いはどんどん増して、とてもじゃないが乗って下るのは無理そうだ。

ちょうど峠の分岐から少し行ったところに山小屋があるということは地図読みの段階でわかっていたので、中に入れるかは知らないが建物の影で風くらいはしのげるだろうと、凍った尾根筋を進むと、

あった。えらい立派なのが。

 


 

修験の道の宿場としてボランティアグループによって管理運営されている山小屋らしい。常駐する管理人などはなく、鍵もかかっていない。大峯奥駈道をいく登山者の善意と志納によって成立している憩いの場だ。

吹きすさぶ暴風に押されながら中に入ると、外とは比べ物にならない温かさ。助かった…

が、部屋の中にあった温度計を見るとまさかのマイナス1℃。ほな外は何度やってん。

 

小屋の中には薪ストーブが設置されており、流石に勝手に使うのはどうかと一瞬ためらったが、周りを見れば着火のためのライターや新聞紙に加えて薪まで完備されている。風も強さを増す一方だし、しばらくここで火に当たって一休みさせてもらうことにした。

新聞紙の上に小枝を組み、火を育ててから大きめの薪に移す。あっという間に火室を満たして揺れる炎の美しさときたら。氷点下の暴風にさらされて凍えきった身体にこれ以上の癒やしはない。

薪を一通り組んで蓋を閉じ、一息ついて改めて小屋を見回す。宿泊用の布団や毛布、近くの水場から飲水を組むためのタンク、湯を沸かす夜間、カセットコンロに救急箱に非常食。本当になんでも揃っている。

 

窓の外の風は相変わらず強くなる一方で、時折小屋が軋むほど。この小屋がなかったら今頃どうなっていたことか。前線本体の通過にともなって今まさにピークを迎える暴風が轟音をたてて壁を軋ませている中で、ゆったり揺れる薪ストーブの火を眺める静かな時間が流れていく。

決して狙ってきたわけでは無いのだが、結果的に今日の寒波も暴風も、全てがこの瞬間のためのお膳立てのように思えてきた。魂が回復していく。この上ない。完璧過ぎる。

どれくらい時間が経ったか、とにかく全身の力を抜いてぼーっとしていた。最高の時間だった。

 

依然風はとんでもなく強いが、それでもピークは去った様子。

次の人のために周囲の枯れ木から薪を補充し、志納箱に滞在料をねじ込んで小屋を後にした。

次は是非夏に来たいな。


 

山小屋からは反対側に下って国道R425へと合流。

どうやらこの道自体が冬季閉鎖中らしく、もっと手前で通行止めのゲートがあったらしいが、途中の林道から合流したのでそんなことはつゆ知らず、

トンネルの前のバリケードでそれを知ることとなる。

山並みが深い。これぞ紀伊半島の景色だ。

 

下北山村方面にむけて山を下り、ダム湖の周囲の廃道を進む。

ゴロ岩の多い荒れた廃道をしばらく進むと、人造の湖に沈んだかつての発電所とご対面。

ダム湖特有の不条理な静けさに浸かって佇むコンクリがエモい。

その後も完全な廃道と化した道を、概ね押し歩きながら進むうちに徐々に日が暮れていった。

もちろん最後は温泉で〆。

 

わらじチキンカツ、でっかくて美味かった。

 

おしまい

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