三体とプロジェクト・ヘイル・メアリー
灼熱の夏にこそ冷たい宇宙の話が読みたい。ということで、今年は前から読みたかったSF作品に手を伸ばしてみた。どちらもとても良かったのでこれから軽く紹介するけど、ネタバレは楽しみを損なわない範囲に抑えるつもりなので、興味が湧いたら是非読んでみて。SFはいいぞ。
三体
中国で歴史的な売上を記録し数年前から話題になってた 劉慈欣による全三部5冊に渡る長編ハードSF。
文化大革命に端を発する惑星間戦争のお話。これだけでいろいろ唆られるものがあるよな。
重厚極大かつ綿密精緻な世界観で見事にコーティングされて高尚な店構えしてるのに、暖簾をくぐって席についたら少年漫画的カタルシスをありったけぶっこんだメガ盛りパワー系定食が出てきた、そんな感じの作品。
基本的に感想のためのボキャは「うおー!!」「うっーわ!」「こっわ!!」くらいでちょうどいい。
第一部は序盤のシリアストーンに騙されて気を張って真面目に読んでたからちょっと肩凝ったけど、終盤パナマ運河のくだりで爆笑して「あ、これもっと頭空っぽにせなあかんやつや。」と気づいてからはめちゃくちゃ気楽にエンタメとして楽しめた。
第二部『黒暗森林』がいい締まり方するから、ここで終わっといたら綺麗やのに…と、新たに風呂敷を広げ始めた第三部の中盤くらいまでは思ってたけど(というか今でも思ってるけど)、この上なく文字通りに「畳み」にくる最終盤でそんな懸念もどうでも良くなり、「はぇ〜すげぇもんを読んだ…」という呆然とした読後感に浸った。
とにかくスケールがデカい。よくもまぁこんなこと思いつくな、という設定ばかりで唸る。惑星間戦争が始まったかと思いきや、まさかの「なろう系」とも言うべき展開がぶちこまれたりと本当にベタから突拍子もない事までいろんな要素が山盛りの闇鍋。
ベストラインは、第二部黒暗森林の
暗い、クソみたいに暗い
プロジェクト・ヘイル・メアリー
インターステラーに続きまたしても異星に取り残されたマット・デイモンが頑張る映画『オデッセイ』(原題:“The Martian”)の原作者アンディ・ウィアーの3作目最新作。突如宇宙船内で目覚めたここはどこわたしはだあれな主人公が徐々に記憶と目的を取り戻しながら奮闘するお話。それ以上はネタバレになるから何も言えない。
ポジティブな主人公が次々とトラブルを乗り越えていくという意味では “The Martian” と同じようなテンションで読める。『三体』の暗黒宇宙の口直しにぴったりなハートフルSF。
和訳の上巻を読んだ時点でその軽快な語り口と台詞回しから原版で読んだほうが面白いやつだなと判断。下巻に進みたいのを我慢してペーパーバックの洋書原作を調達した。
上巻を日本語で読んである程度の用語が頭に入っていたってのもあるけど、全体的に簡潔平易な英語で書かれているのでとても読みやすくて英語学習にもちょうどいい難易度。
原版の表紙にあった “The ultimate page-turner.” って書評に偽りはなくて、笑いあり驚きあり涙ありの飽きさせないストーリー展開で最後までダレずに最後まで突っ走れる。
読み終えて振り返ればストーリー全体としてはそんなに目新しさはないというか特段奇抜な設定ではないんだけど、場面場面の描写が簡潔で上手くて「やっべーどないしよ!」っていう主人公の気持ちとシンクロしながらどんどん先に進んでいく。
SFあんまり読んだことない…って人でもかなりとっつきやすい1冊だと思うので、是非読んでみて。
ベストラインは
“I can’t eat— ” I pause. “I…What?”
あとがき
ここ数年、自転車に乗るより家で本読んで勉強してる方が満たされる夏を送ってる。というか自転車に気持ちよく乗れるような気温じゃないんよ。毎日毎日体温超えやがって、ええかげんにせえよしばくぞ。
最近唯一のサイクリングは信楽へのドボンライド。くっそ気持ちよかった…
でも8月末には心躍る素敵なお誘いをいただけたのでそろそろ走り始めるか。ええかげんはよ冷えろ。
おしまい
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