京都市内から見て南西に位置する標高924mの大きな山、愛宕山。
東北の比叡山と対をなす信仰の山へと自転車担いで登った記録。
出発
車載で京都縦貫道を飛ばす。快晴の長岡京から老ノ坂トンネルを抜けるや否や霧の中。知ってた。
酷道477号を抜けて桂川沿いまで来たあたりで車をデポし、いざ出走。得物はJARI。本当は650Bを試したかったんだけど、厄介な問題が発生したので700cで継続運用。
府道362→363号
弓槻トンネルから細野集落を抜けてR162へと合流…失礼、(旧)だった。京北トンネルができて暫く経つけど、学生時代に走り倒した栗尾峠の記憶がこびりついてて未だにアップデートされていない。
京北の街を眼下にサンダイコーへ下るあの道のがもはや過去のものになろうとは。
林道田尻谷線 田尻廃村跡へ
ここからお待ちかねの林道へ。さあ行くぞ。
 
ダークな林道に突如現れる彩度バグった菌類(?)。画面では黄色みが強く見えるけど、実際はもっと赤々しいオレンジだった。
至福のトライデント。真ん中の道を行くとすぐ舗装が消えた。
不自然に拓けた谷筋。これもいつぞやの台風の爪痕か。
 
ごきげんなダブルトラックが徐々に山へと還っていく。差す陽は鋭く、なお暗い。
この先は廃村田尻。
役目を終えた道の美しさよ。
廃村跡を楽しみにして来たんだけど、奥に控える山に気が逸って写真もろくに撮らず走り(担ぎ)抜けてしまった。尾根筋への担ぎ上げ
 
廃村より奥は渡渉を繰り返しながら担ぎメインで進む。
今回から新たに導入した新兵器、XM9。登山靴のようなナリをしているが、れっきとしたシマノのビンディングシューズ。
2年ほど前に廃盤となっており苦労したが、なんとか新品を手に入れることができた。
GORE-TEX製で渡渉もお手の物。そして何より温かい。
川の無い谷を尾根まで担ぎ上げる。といっても斜度はゆるくのんびり散歩気分。
ちなみにモンベルのフレームバッグはプチプチを入れて専ら担ぎ用のショルダーパッドに。すこぶる快適で最後まで肩の痛みとは無縁だった。
尾根筋へ出た。京都の市街は霧の向こうにぼんやりと。
尾根沿いグラベルは人工的に撒かれたバラス。走りにくいし風情もないが、オフロードバイクもよく通る道なので路面の保護のためだろうか。
首なし地蔵〜愛宕神社
グラベルをしばらく行って愛宕山への登山道入り口に到着。
有名な首無し地蔵とご対面。鮮やかな花にホッとする。
『愛宕山 首なし地蔵』で画像検索すると、どの写真にもきれいな花が活けてある。
首を切っても地蔵は死なず。廃仏毀釈破れたり。
ちなみに宿那鬼も死なない。タロウも死なない。エンマーゴは死んだ。ウルトラマンの話です。
愛宕山へもなだらかな稜線をトレース。
日曜日なのでハイカーが多いかと思ったが全くそんなことはなく。
担いでは乗り、また担ぎ。
チェストマウントを使ってみたけど、乗車時の角度を間違えてて前が見えない。無念。
難所といってもこの程度。下手にロープに頼らずに姿勢よく登ろう。
愛宕神社の裏手まで来て、やっと市街を見渡せた。やっぱり御所はでかいなあ。
愛宕神社。表参道まで出ると参拝客がちらほらと。階段下に自転車を置いてお参りすることに。 不揃いな石段が山に馴染む。
幅も高さもまちまちだから一歩一歩に気を遣って登る。
そこにリスペクトがある。
 
風の抜けるいい音がするお社だった。
お参りを終え、少し戻ったところに特等席があったので腰を下ろして昼ごはん。旧愛宕スキー場跡
北の稜線へ向けて少し行くと何やら面白そうな看板が。
 
1944年、戦中に閉鎖されたスキー場跡だそうで。
スキー場だった頃は多くの人が行き交っていたのか。特にこれといった遺構は無く、今は広葉樹がまばらに生えた少し不思議な雰囲気の漂う静かな雑木林。
自転車で木々の間を走り回ってみる。
標高900m、枝葉を踏む音、風の音。
癒せ。人間は露のごとし。癒せ。風は嵐。癒せ。 太刀持て癒せ。
稜線サイクリング
引き続き稜線を行く。傾斜は穏やかで道幅も広く木の根を踏み越えずんずん走る。
楽しくないわけがない。
突然謎の巨大な建造物。どうやら反射板っぽい。
調べてみると旧国鉄の通信回線施設だそうで。
マウンテンバイクには役不足であろう走りやすいトレイル。まさにこんな道を走りたくて地形図とにらめっこしていたので感慨もひとしお。
もうひとつのピークに到達。時間は14時半。愛宕神社からここまで、誰ひとり合わない。
山頂から先は徐々に斜度が厳しくなる。
落ち葉を掻き分け斜陽の稜線を下る。
落ち葉の上に大の字になって全身の力を抜く。思いっきり深呼吸してみたり、目をつぶってひたすら遠くの音を聞いてみたり、揺れる枝を平衡感覚がなくなるまで見つめてみたり。
平時、街中で「まともな社会人」やらされて溜まる生き物としてのストレスって、根本的にはこういうことでしか処理できないんだよな。
誰もいない場所でひっくり返って土と空に沈む時間が人生には絶対に要る。
気がつけば1時間近くボーッとしていた。身体は冷えたが、心はとても軽くなった。
夜が来る
のんびりしすぎて日が暮れそうだ。えらいこっちゃ、まだもう一山越えたいのに。
ここ、地形図上では道が途切れてるけど、等高線の間隔を見るとおそらく突破できそう。日暮れが近くどんどん真っ暗になっていく。迷ってる時間がもったいない。GO!!
「夜がちゃんと撮れる」ってのが、iPhone8から13に買い替えて一番感動したポイント。
これ越えたら温泉…これ越えたら温泉… pic.twitter.com/4UmTCfum1u
— やくも (@wartori621)
December 11, 2021
山の向こうの残光を追って、最後は日吉ダムの温泉で一風呂浴びて帰路についた。
いいサイクリングだった。
おしまい

  
  
  
  

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