北陸シングルスピードツーリング2日目
この日のお目当ては2023年末に開通した「冠山峠道路」。
県境にそびえる冠山峠で分断されていた国道417号をトンネルでぶち抜いて福井・岐阜間をつなぐこの道は、Wikipediaによると計画の始まりが平成頭の1989年ということで、足掛け34年の歳月をかけた一大事業の賜物。
豪雪地帯の厳しい冬を土木の力でぶち抜く納税実感インフラサイクリングのはじまりはじまり。
朝食会場は一階に併設された『魚民』で、ホテルのおっちゃんがひとり厨房で作るハムエッグ定食を食うというよくわからんスタイルだったが、安い飲み屋特有のあの匂いは起き抜けに浸るもんじゃねえな。酷かった。
6階の客室から望む鯖江の朝。ここから見える近くの山はそれほど白くないけれど、これから向かう岐阜県境は北陸屈指の豪雪地帯。
てことで出発。
昨日は押し担ぎもあってのんびりしたペースだったけど、今日は夕食までには帰宅する予定なので100kmちょいを7時間程度で走りたい。ロードならなんてことないけど、シングルスピードで100km超えは初めて。寄り道は少なめに淡々といこう。
なんと開通は2024年11月24日…ってことはまだ2ヶ月も経ってないできたてほやほやのトンネルだった。
自転車が通れるような歩道はないのでやむなく車道を進む。
車通りはそれほど多くないが、それでも途中何台かはやってくる。こういうトンネルでは交通量が多く連なっている場合よりむしろ単独で飛ばして近づいてくる車が一番怖い。
後方遠くに車の音が聞こえたら一度しっかり道の真ん中に出て、ライトを手で持って後ろに向かってゆっくり振る。しっかり存在をアピールして、迫る車が減速する気配を感じたら端に寄って車を通す。ギリギリ端を走るのだけは絶対にしない。腹を立てて轢きにくる狂人よりも、車幅感覚のおぼつかない或いはそもそも気づきもしないマヌケを未然に止める。
これが道交法的にアウトかセーフかは知らないが、こっちは命がかかってるのでガタガタ言われる筋合いは無い。やるかやられるかだ。
北陸シングルスピードサイクリング
シングルスピードバイクでゆく北陸ツーリングの記録。山中峠雪中行軍、しおかぜライン、林道越前西武2号線へ
この日のお目当ては2023年末に開通した「冠山峠道路」。
県境にそびえる冠山峠で分断されていた国道417号をトンネルでぶち抜いて福井・岐阜間をつなぐこの道は、Wikipediaによると計画の始まりが平成頭の1989年ということで、足掛け34年の歳月をかけた一大事業の賜物。
豪雪地帯の厳しい冬を土木の力でぶち抜く納税実感インフラサイクリングのはじまりはじまり。
鯖江の朝
鯖江の駅前のビジネスホテルで一泊。朝食会場は一階に併設された『魚民』で、ホテルのおっちゃんがひとり厨房で作るハムエッグ定食を食うというよくわからんスタイルだったが、安い飲み屋特有のあの匂いは起き抜けに浸るもんじゃねえな。酷かった。
6階の客室から望む鯖江の朝。ここから見える近くの山はそれほど白くないけれど、これから向かう岐阜県境は北陸屈指の豪雪地帯。
てことで出発。
昨日は押し担ぎもあってのんびりしたペースだったけど、今日は夕食までには帰宅する予定なので100kmちょいを7時間程度で走りたい。ロードならなんてことないけど、シングルスピードで100km超えは初めて。寄り道は少なめに淡々といこう。
新板垣トンネル
鯖江からは徳山ダムまでは国道417号線をひたすら南下していく。武生の街から山に分け入り、最初にくぐるのは全長約2.5kmの新板垣トンネル。なんと開通は2024年11月24日…ってことはまだ2ヶ月も経ってないできたてほやほやのトンネルだった。
自転車が通れるような歩道はないのでやむなく車道を進む。
車通りはそれほど多くないが、それでも途中何台かはやってくる。こういうトンネルでは交通量が多く連なっている場合よりむしろ単独で飛ばして近づいてくる車が一番怖い。
後方遠くに車の音が聞こえたら一度しっかり道の真ん中に出て、ライトを手で持って後ろに向かってゆっくり振る。しっかり存在をアピールして、迫る車が減速する気配を感じたら端に寄って車を通す。ギリギリ端を走るのだけは絶対にしない。腹を立てて轢きにくる狂人よりも、車幅感覚のおぼつかない或いはそもそも気づきもしないマヌケを未然に止める。
これが道交法的にアウトかセーフかは知らないが、こっちは命がかかってるのでガタガタ言われる筋合いは無い。やるかやられるかだ。
後ろから来た車が抜けるか否かを決めるのは常に前を走っているおれなので、危ないと思ったらド真ん中に出て道を塞ぐ。腹立てた狂人に轢かれるリスクは引き受けて、抜けると思って当てにくるマヌケを未然に止める。
— やくも (@wartori621)
そこには法律もマナーも思い遣りもなくて、ただおれの安全があるんだよ。
February 13, 2023
いざ豪雪地帯へ
トンネルを抜け池田町に入ると、福井〜鯖江あたりの平野部とは景色が一変する。白山から九頭竜湖を挟み能郷白山、冠山と連なる屈指の豪雪地帯に近づいていく。
とはいえ主要な国道は完璧に除雪されていて、この日は南風を受けて比較的気温も高かったので路面凍結もなく走行に支障は無い。キツい峠はトンネルでぶち抜きながら、標高400m程度まで緩やかに登っていく。
バーティカルな造林に差し込む朝の斜陽が眩しい。
シングルスピードに乗り始める前は、ギア1枚じゃとても山なんか走れないと思っていたが、実際に乗ってみると想像以上に走れるものだ。
上り坂では全力でゴリゴリと力を込めるのではなく、身体を緩やかに捻りながら左右のペダルに体重を移すだけ。それで登れないような坂は押せばいいのだ。とはいえ斜度が原因で押し歩くことはこの日一度もなかったが。
流石に幹線道だけではつまらないので、短いトンネルを巻く道に入ってみれば路肩の雪は身の丈ほどに。大阪はもちろん京都でもなかなかここまでは積もらないので、俄然テンションが上がる。
冠山トンネル
そうこうしているうちに本命の冠山トンネルまでやってきた。全長約4800m。これまで自転車で潜ってきたトンネルの中では文句なしに最長だ。
ここまでのトンネルと同様に自転車が通れるような幅の歩道はないため車道を行くより他にない。ライトの点灯を確認し、景気づけにヤッホー!と叫んで出発。
福井側入口の標高が約440m、岐阜側の出口が約510mということで、およそ70mUP。勾配は大したことはないが、トンネル内はずーっと緩やかな登りが続く。
上り勾配の変化によって生まれた水平線まで延々と続く蛍光灯を眺めながら茫々と進んでいると、自意識がぼんやりと周囲に溶け出すような不思議な感覚に襲われる。
一度脚を止めて耳をすませる。吹き込む風かサーキュレーターのモーター音か、おなじみのノイズまみれの静寂。
ルオオオオオ!!!と腹の底から全力で咆哮を上げてみる。はるか向こうの消失点まで何度も反響しながら進む声。音速が見える。なるほど確かに遅いな。
ちょうど半分。「やっと」か「もう」かの感覚すらも俄にはおぼつかなくなる隧道の魔力。
正月明けということもあってか交通量は極めて少なく、結局トンネルを抜けるまでに抜かれた車は5台もなかった。
徳山ダムへ
冠山トンネルを抜けると国内最大のロックフィルダム、東海の水瓶、数多の村落を水底に有する徳山ダムが姿を表す。広大なダム湖畔の縁を、いくつもの橋とトンネルで山体の凹凸をキャンセルしながら水平に連なるこの不自然の極みのような道はギア一枚で走るのに何の苦労もなく、果たして今朝から来た道を全て旧道で辿ったならば、一体どれだけの時間がかかったのか、いや、そもそも冠山の峠でも1000mを優に超えてるんだから確実に凍死してるだろうな、などと思いを馳せる。
徳山ダムといえば数年前、ダムの造成にあたって唯一沈まなかった集落、門入へと道無き道を突き抜けて向かったことを思い出す。
ちょうどあの辺
ホハレ峠から滑落を繰り返しながら辿り着いた静謐の湖畔は本当に素晴らしかった。
【限界集落へ】ホハレ峠〜門入 徳山ダムに"沈まなかった"村への山岳サイクリング
今思えばよく行ったよなこんなとこ。
ダム堤体もキッチリと除雪されており通行には何ら問題はなかった。
木ノ本へ
時刻はお昼時を過ぎいい感じに腹も減ってきた。依然飯屋など望むべくもない山奥だけど、今まで何度もお世話になってる道の駅があるので心配はいらない。年末年始明けとはいえ通常の土日、普通に営業してるだろうとたかを括って立ち寄ると…はい。
自販機におしるこがあってよかった。
ハンガーノック寸前のヒリつく空腹を感じながらこの日最後の八草トンネルを超えどうにか木ノ本に辿り着く。
100kmをグロスAve. 16km/hほど、想定以上のハイペースで走り切り、無事日の高いうちにゴールイン。夕飯にも間に合いそうだ。
あとがき
ということでシングルスピードで初の本格ツーリングとなった一泊二日の北陸旅、1日目は雪、2日目はトンネルを満喫しながら距離にしておよそ180kmを走り切ることができた。
足に疲れが出るかと思ったが意外とそんなこともなく、全身をバランスよく使って漕いでいるおかげか翌日以降も身体が軽い。
これなら多少のアップダウンのあるコースにも積極的にシングルスピードで臨めそうだ。
さあ次はどこへ行こうか
おしまい
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