【レビュー】Sennheiser HD599|HD650との違いも実機で比較

ヘッドホンスタンドに掛けたゼンハイザー HD599 ヘッドホン

高級ヘッドホン沼の入口入門機として名高いゼンハイザーのHD599を購入した。

自分はHD650や、もっと高価なヘッドホンもたくさん持っているけど、多くのヘッドホン好き達が入口として通ってくる一台のようなので一応通ってみることにした。

Amazonで廉価に販売されている HD599 SEの色違い同等品でもあるので、SEを検討している人にも参考になるはず。

この記事の結論

  • 扱いやすくて音質もよくクセがない高コスパな佳作機
  • E.A.R.による前方定位な音が特徴的
  • HD650とも共存できる独自性はある

Sennheiser HD599について

HD599は、ゼンハイザー(Sennheiser)が2016年に発売した開放型ヘッドホンで、長らく入門機として人気を博していたHD598の後継機として登場したモデル。

ゼンハイザー HD599

599の型番だけ見て「HD500シリーズの最上位モデル」とする記事もたまにあるが、最近ではHD560SやHD550、HD505など、500番台でもより高価なモデルが登場しているので、プロ用モニターシリーズの600番台に対してコンシューマーリスニング向け500番台ラインナップの一つというのが実際のところ。

HD599SEとの違い

ゼンハイザー HD599 と Amazon限定モデル HD599 SE の比較

左が HD599、右が HD599 SE(画像:Sennheiser)

HD599SEはAmazon専売の廉価モデルで、パッケージと見た目上のデザイン以外は全て同じ。SEは安いときなら12kほどで購入できるので、独特のプリン色を求めるのでなければこっちでいいか。

 

HD505 / 550 / 560S / 599の違い

 

ゼンハイザーの開放型ヘッドホン HD505・HD550・HD560S・HD599 の比較

左から HD505、HD550、HD560S、HD599(画像:Sennheiser)

  HD505 HD550 HD560S HD599
価格の目安 Amazon発売時 50,600円 発売時 約54,450円 発売時 約2.5万円・税抜 2万円前後
販売 Amazon限定 Amazon以外で販売 一般販売 一般販売(黒のSEはAmazon限定)
国内発売 2025年2月 2025年4月 2021年 2016年
インピーダンス 120Ω 150Ω 120Ω 50Ω
感度(1kHz/1V) 107.9dB 106.7dB 110dB 106dB
周波数特性 12Hz〜38.5kHz 6Hz〜39.5kHz 6Hz〜38kHz 12Hz〜38.5kHz
         
重量 237g 237g 240g 250g
付属ケーブル 1.8m(3.5mm) 1.8m(3.5mm) 3m(6.3mm) 3m(6.3mm)と1.2m(3.5mm)の2本
カラー ブラック×カッパー ブラック×グレー ブラック アイボリー×ブラウン

いずれのモデルも開放型でケーブル脱着可能なモデルという基本構造は同じ。ちなみに使用している振動板はサイズこそ38mmで共通しているが、インピーダンスや感度は異なるので同等品というわけではなさそう。

最も高価なHD550に至っては、600シリーズの密閉型HD620Sと磁気回路などの部品を共通化しているとのことなので、桁数の垣根はあってないようなもの。

スペック

形式 ダイナミック型・開放型(オーバーイヤー)
インピーダンス 50Ω
感度 106dB SPL(1kHz/1Vrms)
周波数特性 12Hz〜38,500Hz
ひずみ率 0.1%未満(1kHz)
重量 約250g(ケーブル除く)
ケーブル 着脱式。3m(6.3mm標準プラグ)と1.2m(3.5mmミニプラグ)の2本が付属
付属品 6.3mm→3.5mm変換アダプター
発売 2016年
価格の目安 2万円前後 (HD599SEの最安は1万2000円ほど)

外観とデザイン

ゼンハイザー HD599 の全体(真上から)

アイボリーとブラウンの所謂プリンカラーは先代のHD598時代からの特徴だが、HD599になってクリーム色の部分はかなり白っぽくなった。HD598ははっきりと黄色がかったカスタード色をしており、プリン度で言えば先代が勝る。

とはいえこのシリーズはプリンカラーがアイデンティティなので、特に好みというわけではないがあえて無印を購入した。

HD599 のハウジング(開放型のグリル)

単体で見ると質感は悪くないものの、上位機種のHD650などと比べると全体的なチープさは否めない。特に可動部の軋みや、長さ調整のスライダー部のプラスチッキーな薄さなどが値段相応の作りを感じさせる。

HD599 を横に置いたところHD599 のヘッドバンドのSENNHEISERロゴ

とはいえ製品全体のデザインは数あるヘッドホンの中でもかなり、というか1・2を争うレベルでカジュアルな部類だと思う。洒落た部屋に置いてあっても違和感が無いヘッドホンって珍しいもんな。どこから見ても換気扇みたいなBeyerdynamic なんかと比べたらエラい違いや。

装着感

HD599 のベロア素材のイヤーパッド

ゼンハイザー特有の楕円形のベロアパッドは耳をすっぽりと覆う形で圧迫感はなく快適。十分な深さがあるので耳が奥に触れることはなかった。

側圧はHD650と比べても控えめで2時間映画を見ても痛みなどは全く感じない。夏場のムレだけがネックか。

HD599 の着脱式ケーブルの接続部

ケーブルは着脱式で、3mと1.2mの2本が付属します。自分は机袖すぐのヘッドホンアンプと接続するので1.2mを常用している。このケーブル、差し込みが中途半端だと片方からしか音が出ないので、カチッと最後まで確実に接続すること。

音質レビュー

試聴環境:Mac miniでのSpotifyロスレスからHP-A8やSPL Phonitor SEに接続

 

第一印象はとても暖かみのある聴きやすい音。モニター的な一音一音の解像度を楽しむのではなく、高音も低音も音のエッジは多少丸めて音楽全体として受け取るタイプの典型的なリスニングヘッドホン。

特定の音域が強調されるような感覚は薄いが、低域の制動が甘いので膨らんだ低音が全体にぼやっとした柔らかい印象を与える。ボーカルはそれほど目立たずバックミュージックと足並みを揃えて耳に届く感じ。高価格帯のヘッドホンにあるような歌い手の口が見えるようなタイプではなくあくまで音楽と一体で心地よく鳴らしている。

空間表現はそれほど広くもなく狭くもなく。低音のまるさも相まってあまり立体的に鳴るタイプではないが、平面的な描写力はそこそこ高いので音数の多いJPOPもしっかり聴ける。

特徴的な前方定位 -E.A.R.(Ergonomic Acoustic Refinement)-

また、HD599で最も特徴的なのは聴感上のサウンドステージが頭内ではなく前方に定位しているところ。

HD599 のイヤーパッドの内側

ハウジングの後ろ寄りに凹凸があり、これはおそらくハウジング内での反響調整の役割をしているものと思われる。さらにドライバ自体も耳に対して斜め前から音が聴こえるようわずかに傾斜させてあり、明確に前方定位を意識した設計となっている。

これは「E.A.R.(Ergonomic Acoustic Refinement)」と呼ばれる設計で、音が斜め前から耳に入り、スピーカーを前に置いて聴くときに近い聴こえ方になるとされている。

このE.A.R.はHD500系で採用されている構造(ハイエンドのHD800Sも同じ考え方のドライバー配置)で、逆に正確な原音再生を目指すHD600シリーズでは採用されていない。

機種 ドライバーの角度・前方配置 特徴
HD599 あり(E.A.R.) HD558/598から続く設計。音が少し前に定位しやすい
HD560S あり(E.A.R.) メーカーも「広い音場」を売りにしている
HD505/HD550 あり 角度をつけたドライバーで、近くに置いたスピーカーの聴こえ方を再現するとされる
HD600/HD650/HD660S2 なし ドライバーは耳とほぼ平行。定位は頭の中寄りで、音色の正確さを優先
HD800 S あり 大きなリングドライバーを角度をつけて耳から離して配置。広い音場の代表格

自分は手持ちのヘッドホンは頭内定位のモニターヘッドホンが多いため、前方定位のHD599の聞こえ方はかなり新鮮に感じた。

サウンドステージが目の前に広がる独特な感覚もさることながら、単に音が前から聞こえると言うだけでなく、不思議なことに低音が聴感上の下方、低い位置から聞こえてくる印象があって、文字通り重心の低い出音の安心感を生んでいる。

 

HD599とHD650の比較

HD599を検討する際にどうしても欲が出て目配せしてしまうHD650との比較もまとめておく。HD650単体のレビューはこちらの記事で詳しく書いている。

構造

HD650を10年以上使ってきたうえでHD599と比較すると、まず手に持った瞬間にHD599のハウジングのチープさに驚いた。どちらもプラスチック製のはずだが、特にサイズ調整のスライダー周りの素材や構造などはHD650のほうが明らかに剛性が高い。

HD599 と HD650 の比較(左がHD599、右がHD650)

背面メッシュ部もHD650はほぼ全面が金属グリルであるのに対してHD599はプラの面積が大きい。ただ、全体的なデザインの「こなれ感」で言えばHD599の圧勝なので、このあたりはヘッドホンに何を求めるかによる。

 

音質

音質面でも、出音の性能で言えば基本的に全ての面でHD650が上回っている。

一番の違いは低音の制動力で、HD599ではボワついた柔らかな低音が中高域をマスクしてしまっているが、HD650では低域の輪郭が明瞭になり、それによって中高域の本来の音の伸びを味わえる。

空間表現もHD650が大きく上回っており、基本的にどんな音源を聞くにしてもHD650のほうが聞こえてくる音の情報量は多い。

一方で音楽としての視聴体験では先述したE.A.Rによる前方定位の有無がHD599とHD650の大きな違いを生んでおり、頭内定位で正確な音を鳴らすHD650に対して、HD599は多少制動が甘く大味ながらも眼前で音が鳴る気楽さとダイナミックさがあり、音楽鑑賞としての面白さは甲乙つけがたい。

寝る前に少しの間だけぼんやりチルい音楽を聞きたいときなんかにはあえてHD599を選びたくなる瞬間もある。

 

そして現状3倍近い価格差を考えると、なんとなく「良いヘッドホンが欲しいなぁ…」というヘッドホン初心者の最初の一台にはHD599を勧める。その後お金をためてHD650を聴いたときの感動は、自分のように逆走してしまうと味わえないものなので。

  HD599 HD650
価格の目安 2万円前後(SEは最安1万2千円ほど) 6万円前後
シリーズ HD500シリーズ(入門〜中級) HD600シリーズ(リファレンス)
発売 2016年 2003年
インピーダンス 50Ω 300Ω
感度(1kHz/1V) 106dB 103dB
鳴らしやすさ スマホでも音量を取れる 据え置きアンプ推奨
周波数特性 12Hz〜38.5kHz 10Hz〜41kHz
ひずみ率 0.1%未満 0.05%未満
重量 250g 260g
付属ケーブル 3m(6.3mm)と1.2m(3.5mm)の2本 3m(6.3mm)
外装の仕上げ アイボリーのマットなプラスチック+シルバーの装飾 グレーの光沢メタリック塗装のプラスチック
ヘッドバンド ブラウンの合皮 プラスチック+内側にクッション

 

HD650を含めた開放型モニターの定番5機種(HD650・DT990PRO・ATH-R70xa・OLLO X1・SRH1840)の比較はこちらの記事にまとめている。

アンプは必要?スマホ直挿しとの比較

インピーダンスは50Ωと低めながら、さすがはゼンハイザーのドライバーだけあってヘッドホンアンプを奢ればそれに応えてくれるだけのポテンシャルを秘めている。

スマホ直挿しで鳴らしても必要最低限の音量は出せるが、もっといい音をと思うとどうしてもボリュームを上げたく鳴る。音質向上というより単純に今まで聴いたことのないくらい大きな音で聴いてみると音楽体験として化けるので、やはりアンプがあるに越したことはない。ひとまずDAC機能と必要最低限のパワーを稼ぐ目的でこの辺を買っておけば幸せになれるはず。

 

HD599の「次」におすすめのヘッドホン-DT990PRO

HD599でヘッドホンの魅力にハマったなら、次の一台はぜひこれを買え!というおすすめの一台がある。

ゼンハイザーと並ぶドイツのヘッドホンメーカーの双璧、Beyerdynamic(ベイヤーダイナミック)のDT990PROだ。

HD599 と Beyerdynamic DT990PRO の比較

優しいカラーとフォルムのHD599と並ぶにはあまりにも無骨過ぎる業務用換気扇のような面をしたこのヘッドホンは、出てくる音もまるで正反対のじゃじゃ馬中のじゃじゃ馬。

暴れ散らす低音の膜をぶっ裂きながら耳をつんざくザクザクした高音をかき鳴らしながら、それでいて雰囲気はどこかダークという何もかもが正反対な刺激あふれるヘッドホンなので、ヘッドホンが種類によっていかに異なる音を出す機械かということを強く実感できるセットになる。

 

よくある質問

HD599とHD599 SEの違いは?

HD599 SEはAmazon限定のモデルで、パッケージと見た目のデザイン以外は同じ。安いときは1万2千円ほどで買えるので、プリンカラーにこだわらなければSEで十分。

 

HD599にアンプは必要?

インピーダンスは50Ωと低めで、アンプがなくても鳴らせる。ただ、ヘッドホンアンプを使えばそれに応えるだけのポテンシャルがあるので、まずはDAC機能と必要最低限のパワーがある小型のアンプがあると良い。

HD599とHD650はどちらを買うべき?

価格差は3倍近い。初めての一台ならHD599、解像度や正確な音を求めるならHD650。HD599は前方定位で、のんびり音楽を聴きたいときに向いている。

音漏れはする?

開放型なので音漏れはする。電車の中や家族が近くにいる部屋には向かず、自宅で一人で聴く用途向き。

 

まとめ

ヘッドホンスタンドに掛けた HD599

正直購入する前はHD650を長年使った自分が満足できるのかと半信半疑だったが、定位感や目指す音作りの違いが実感できてとてもいい買い物となった。

そうなると次はほんとのハイエンドが気になってくるなあ…ほしいなあ、HD800S…

おしまい

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