【レビュー】ATH-R70xa | 空間表現力では唯一無二のモニターヘッドホン

【レビュー】ATH-R70xa | 空間表現力では唯一無二のモニターヘッドホン ヘッドホン

オーディオテクニカの開放型モニターヘッドホンを買って半年近く使ったのでレビューしておく。

ATH-R70xaとは

オーディオテクニカのプロ向け「R(リファレンス)」シリーズ、そのフラグシップにあたる開放型モニターヘッドホン。2015年に出た初代R70xの後継として、2025年2月に約10年ぶりの刷新を受けて登場したモデル。

モニターヘッドホンと聞くと粗探しのための冷たい道具を想像しがちだけど、R70xシリーズは昔から「リスニングでも気持ちよく聴ける開放型」として評価されてきた血筋。ハウジングの共振で低域を盛るという小細工をせず、ドライバーが出した音をそのまま耳に届ける設計をしてメーカー自ら「真の開放型」と言い切っている。

結論から言うと

  • 音が丸くて優しいのに情報量はちゃんとある。めちゃくちゃ聞きやすい。
  • 実測195gは軽すぎる。装着感は過去最高レベル。
  • その割に470Ωの高インピーダンスでアンプは必須。
  • 遮音性は皆無。環境音の影響をモロに受けるので注意。
  • DT 990 PRO / SRH1840 / OLLO X1と比較してもダントツでリスニング向け。

スペック

形式 オープンダイナミック型(開放型)
ドライバー φ45mm(R70xシリーズ専用設計)
再生周波数帯域 5Hz – 40,000Hz
インピーダンス 470Ω
出力音圧レベル 97dB/mW
最大入力 1,000mW
入力端子 φ3.5mmステレオミニジャック
質量 195g(実測・本体のみ)
着脱コード 3.0m/φ3.5mm金メッキステレオミニプラグ
付属品 φ6.3mmステレオ変換プラグアダプター、ポーチ
発売日 2025年2月14日

イヤパッド・ヘッドパッド・コードがいずれも交換可能。

ポータブル化がすすむ昨今の流れに逆らう470Ωの高インピーダンスはなかなかインパクトがある。スマホ直挿しなどでは全く刃が立たないのでヘッドホンアンプは必須。

概観と質感

完全解放のために音抜けを重視した金属メッシュのハウジングが特徴的。RX50までは中央にメーカーロゴがあるけど、ハイエンド機は見た目よりも機能性重視ってことか。

金属製ヘッドバンドは先代のウイングサポートからスライダー機構に刷新され、頭のサイズに合わせて調整できるようになった。この変更については賛否あるようだけど、自分の頭には素直に合った。

ケーブルは両出しの着脱式で、バヨネット式のロック機構付き。引っ掛けても簡単には抜けない安心感がある一方、リケーブルの選択肢が限られる。

おもしろいのはこれ、ケーブル側には左右の区別がなくてL/R両方の信号が通っている。プラグ挿入時に一方の信号を遮断する構造がハウジング側にあるので、どちらを挿しても正しいLRで再生される。最初はこの構造に気づかず、左右の表記無いって不親切すぎるだろと思ったが杞憂だった。

長さは3.0mの一本のみ。DT 990 PROのコイルケーブルもそうだけど、プロ機のケーブルはだいたい長い。デスク横のアンプからは少々長すぎるが、先述した特殊な機構のためリケーブルは難しいのでここは少し不満。こんなもん全部汎用規格で行ってくれるのが一番ええねん。

装着感・遮音性

本体のみの実測で195gという圧倒的な軽さ。手持ちのヘッドホンの中でもダントツで軽い。DT 990 PRO(約250g)でも十分軽いが、それより50g以上軽い。X1に至っては390gなのできっかり倍。

この軽さに加えて完全解放の構造もあって夏場でも籠りが気にならず、装着感も手持ちヘッドホンで間違いなく最高。

ただし一つ大きな弱点もあって、完全解放のため遮音性は無に等しい。暑い夏の自室では背後で常にクーラーが唸りを挙げており、そうした環境音も余裕で貫通してきてしまう。今日は涼しいので窓を開けているのだけれど、音楽を聞きながらも外で鳴いてる虫の声もはっきり聴こえてくる。一般住宅で外界を遮断して作業したい場合には明確に不向きなので注意が必要。

音質

使用するアンプはFOSTEX HP-A8およびSPL Phonitor SE。470Ωという高インピーダンスなので、これまた手持ちヘッドホンの中で一番鳴らしにくい。スマホやPC直挿しでは満足な音楽鑑賞には全く足りないので、ちゃんとしたアンプが無いならおとなしくR50xを選ぶほうがいい。

多くのヘッドホンでは、たとえ開放型であっても多少なりともハウジングからの反響を利用した音作りになっており、例えばOLLO X1なんかは能書きこそ開放型ヘッドホンだけど、ハウジング背面の大変は金属部で覆われており、実際は半密閉型と呼ぶのがふさわしいような構造だったりする。

そこにきてこのR70xaは薄い金属メッシュで極力反響をなくした構造になっており、振動板からの出音一発で音作りを完結させる構造になっている。He1000_unveiled _1600_1600_2_553bcf63 0cbe 4647 a7fd 613c8f03e946.

これを突き詰めたHIFIMANのUNVEILEDシリーズってのがあって、その名の通り振動板の背部を露出させたようなモデルもあるが、オーディオテクニカのいう完全解放も同じような方向性だろう。

個人的にはハウジングからの反響音ってのがヘッドホンで一番個性を感じられるポイントで、生涯マイベストヘッドホンたるDT770PROはまさにハウジング内反響の極地だと思っているんだけど、今回のR70xaはそれとは全く別のアプローチのヘッドホンとなる。

で、開放型のモニターホンとして実は過去にSHUREのSRH1840が自分には合わなくてすぐに手放したことがあったんだけど、その時のレビューを今見返すとまさにこの開放型特有の音の密度のなさと過剰な分離感に言及していた。

なので、今回のATH-R70xaももしかしたら自分には合わないかもなと心配していたが、全くの杞憂で終わった。

全体的な印象としては、意外にも低音がかなりいい仕事をしているヘッドホンだと思う。

高音〜中音にかけての解像度の高さに関しては文句のつけようが無いし、見たい音がしっかり見れる分解能も十二分に高い。SRH1840はそれが悪い方向に働いて音楽としてバラバラな印象を受けたけど、R70xaはその鋭利な中高音を低音が程よく包み込んで全体的なまとまりを生んでいる。

この低音はたぶん「空気感」と言い換えられる部分で、クラシックなど録音のいい演奏を聞くと実際のホール独特の気圧の高い空気感が感じられてものすごい臨場感を感じる。

1音1音の音を剥がして分析的に聞くならX1がダントツで高解像度だし、どこで何が鳴ってるかを知りたいならSRH1840はものすごい能力があったけど、ライブ音源などの空気感の再現はR70xaがぶっちぎりで上手い。(DT990proはというと…あれはもうああいう楽器や)

じゃあスタジオ音源ではどうかというと、こちらでもやはり低音がいい「つなぎ」になっていて、モニターホンにありがちな聞き疲れする鋭さが程よく丸められて音が優しい。

最近イチオシのSundae May Clubのような、典型的な女性ボーカルのバンドサウンドでも高音が刺さりもせず、同時にベースの音のエッジにも実体感がちゃんとあってしっかり音楽と音のどちらにも焦点を合わせられる、

そこに195gの並外れた軽さが生む装着感の良さも相まって、購入以来の登板率はかなり高い。

ほかの開放型ヘッドホンと比べて選びたい人はこちら。HD650・DT990PRO・ATH-R70xa・OLLO X1・SRH1840の5機種を用途別に比較している。

【2026年】開放型モニターヘッドホン定番5機種を本音で比較|HD650・DT990PRO・ATH-R70xa・OLLO X1・SRH1840
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HD650・DT990PRO・ATH-R70xa・OLLO X1・SRH1840の開放型モニターヘッドホン5機種を、実際に使い比べて本音で比較。音の傾向・重さ・アンプの要否を一覧表にまとめ、用途別のおすすめを解説。

まとめ

ずば抜けた軽量性が生む装着感、並の再生環境では歯が立たない高インピーダンス、ハウジングに依存しない完全解放、それがゆえの遮音性の無さによる環境音への弱さ、というハード面ではかなり尖った特徴を持つATH-RX70xaだったが、そこから出てくる音はモニターヘッドホンとは思えないほど音楽鑑賞にも適した、いい意味で安定感のある名機だった。

ライブ録音の空間表現ではこれを超えるヘッドホンはちょと思いつかないので、唯一無二な代替不可能性もあり、かなり値打ちのある買い物だったと思う。長い付き合いになりそうな気がするな。

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