音質にこだわっておきながら、あえてあまり目を向けていなかったのがケーブル類。同じ金かけるならどう考えても出音機たるヘッドホンやスピーカーのほうが優先度高いし、「壁コンからの電気が最後の1m変わったところで、そんなに違いが出るんか?」という疑問がデカかった。
…が、この度棚ぼたでちょっといい電源ケーブルをゲットできたので、実際のところどうだったのかを軽くまとめておく。
OYAIDE BLACK MAMBA-αとは
今回入手したのは、定価2万円オーバーの電源ケーブル、OYAIDE BLACK MAMBA-α。
オヤイデといえばヘッドホンのリケーブルでも有名で、国産ブランドらしい作りの良さと扱いやすさが売り。
Black Mambaシリーズは電源ケーブルの中でもかなり有名どころらしく、いくつかの別モデルも出ているらしい。各モデルとスペックは以下の通り。
BLACK MAMBA シリーズ比較表(価格帯付き)
モデル名 | 導体/アース | 線径/断面積 | プラグ & コネクタ | シールド | 外装/シース | 定格/認証 | 音の傾向・特徴 | 価格帯(国内目安) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
BLACK MAMBA-α V2 | 102SSC(高純度銅)+OFCアース | 3.5SQ(45本/0.32mm) | P-029 / C-029 真鍮無メッキ | 銅箔テープ+ドレインワイヤ | ハロゲンフリーシース | 125V / 15A PSE | フラット傾向。柔らかめで扱いやすく、耳障りが少ない | 約20,000〜25,000円 |
BLACK MAMBA-Σ V2 | 102SSC+OFCアース | 3.5SQ(45本/0.32mm) | P/C-004 Special Edition(ベリリウム銅無メッキ) | 銅箔テープ+ドレインワイヤ | 石英ガラススリーブ+ハロゲンフリーシース | 125V / 15A PSE | 切れ・透明感・低域の締まりが強い。シャープ志向 | 約30,000〜35,000円 |
BLACK MAMBA V2(カスタム/ベース) | 102SSC+OFCアース | 3.5SQ(45本/0.32mm) | 真鍮無メッキ、銀/ロジウムメッキなど選択可 | 銅箔テープ+ドレインワイヤ | ハロゲンフリーシース(外装バリエーションあり) | 125V / 15A PSE | 好みに応じたカスタム可。αとΣの中間的立ち位置 | 約18,000〜28,000円 |
主な違い
- プラグ/コネクタ: αは真鍮無メッキ系、Σはベリリウム銅スペシャル仕様。カスタムV2は自由度あり。
- 外装: Σは石英ガラススリーブで振動減衰を重視。αはシンプルで柔軟。
- 音の傾向: αは自然で聴きやすい、Σはクリアでシャープ。カスタムは中間的。
- 価格帯: Σ V2は上位モデルで高価。α V2は導入しやすい価格帯。カスタムは仕様により幅がある。
ヘッドホン環境での比較レビュー
まずはヘッドホン環境での試聴。解像度の違いを捉えやすい環境ということもあり、電源ケーブルの効果がどの程度出るのかを確かめるにはうってつけ。今回はDT770 Pro XとOllo Audio X1という性格の異なるヘッドホンを用意し、アンプはSPL Phonitor se DACとFostex HP-A8で切り替えながら聴き比べた。


DT770 Pro X + Phonitor se DAC
最近一番良く使っている組み合わせ。ヘッドホンの解像度はそこそこだけど、音のまとまりがいいので気に入っている。純正ケーブルからBLACK MAMBA-αに交換すると、高域の抜けがわずかに良くなり、ボーカルやシンバルが前に出てきて、音の輪郭がややシャープになった印象。低域は量感はそのままに余韻の膨らみが少し減って、よりタイトになった。普段聴き慣れた曲でも、音の整理が進んでクリアに感じられた。
DT770 Pro X + HP-A8
HP-A8では変化が控えめで、「あれ、ちょい透き通ったかな?」という程度。Phonitorほど解像度を追い込んでいないためか、ケーブル交換による差は目立たなかった。それでも長時間聴いていると中高域が耳に届くスピードが少し速くなったように感じるような、ないような。
Ollo Audio X1 + Phonitor se DAC
X1はえげつなく解像度が高くニュートラルでモニター的な性格を持つヘッドホン。BLACK MAMBA-αへのケーブル変更では特に中域の見通しが良くなり、アコースティックギターやピアノの響きが自然に際立つ。音の密度が増すというよりも、「空間に余裕ができて楽器の位置が明確になる」といった印象。
Ollo Audio X1 + HP-A8
HP-A8とX1の組み合わせでは、最も変化が小さかった。クールで落ち着いた音傾向のアンプに対し、ケーブル交換で得られるのは「ほんの少し澄んだかな」という程度。意識的に聴き比べれば違いがあると分かるが、日常的に音楽を楽しむ範囲ではほとんど気にならないかもしれない。
スピーカー環境での比較レビュー
次はスピーカーでの検証。JBL L52 ClassicをTEAC AI-303で駆動し、電源ケーブルを交換してみた。ヘッドホンに比べてスピーカーは空間全体を鳴らすため、低域の締まりや音場の広がりといった要素がより分かりやすい。
JBL L52 Classic + TEAC AI-303
最初に気付いたのは低域の制御だ。ベースやバスドラムの輪郭がやや引き締まり、これまで少し膨らんでいた帯域がすっきり収まる。結果として全体の音像が見通しやすくなり、JBLらしい厚みを保ちながらも整理された鳴り方になる。中域の解像度もわずかに改善し、ボーカルの息遣いやリバーブの余韻がより自然に感じられる。
もちろん、「劇的に変わった!」と叫ぶほどの差ではない。だが、普段のリスニングで「あれ、音場が広がったかも」と気付けるくらいには確実に違いがある。特に夜に小音量で聴くと、静けさの中で音の粒立ちがより立体的に浮かび上がる感覚があり、これはヘッドホンでは得られなかった面白さだった。
総合評価:ヘッドホンよりスピーカーで違いが出やすい
総じて言えば、ヘッドホン環境ではアンプの性能によって差が大きく、Phonitor se DACのように解像度の高い機材では違いを実感しやすいが、HP-A8では変化が小さい。ヘッドホン単体では「ほんの少しの透明感」を楽しむ程度だ。
一方、スピーカー環境では低域の締まりや音場の見通しといった変化が比較的掴みやすく、特にJBL L52 Classicのようにキャラクターの強いスピーカーでは効果がわかりやすかった。ただまあ、夜中にこっそり入れ替えられたら翌日にはわかんなくなってくらいの差ではあるので、まずは良いスピーカーとヘッドホン手に入れて、最後の追い込みで使うくらいでええんちゃうかな、というのが正直な感想。
おしまい
コメント