15年以上かけて実際に買って、使い比べてきた開放型ヘッドホン5機種を比較する。どれも評判を得ている定番機ばかりなので、迷っている人の役に立てば。

先に結論:用途別のおすすめ
5機種の比較表
| ATH-R70xa | HD650 | OLLO X1 | SRH1840 | DT990PRO | |
|---|---|---|---|---|---|
| メーカー | audio-technica | Sennheiser | OLLO AUDIO | SHURE | beyerdynamic |
| 重量 | 195g(実測) | 約260g | 約390g | 268g | 約250g |
| インピーダンス | 470Ω | 300Ω | 32Ω | 65Ω | 250Ω |
| アンプ | 必須 | 必須級 | 不要 | なくても可 | 推奨 |
| 音の傾向 | 空気感・臨場感 | 艶のある中音・まとまり | 階層的な高解像度 | 整然とした分離感 | ドンシャリ・刺激的 |
| 遮音性 | かなり低い | 低い | 低い(半開放) | 低い | 低い |
| 向いている人 | 長時間のリスニング | ジャズ・クラシック | 分析的に聴く・制作 | ミックス・マスタリング | 短時間で気分を上げたい |
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※SRH1840は売却済み。それ以外は現役で使用中(DT990PROは15年目)。
選ぶ前に押さえておくべき2つのこと
アンプがあるかどうかが最初の分岐
32ΩのOLLO X1は何に挿しても鳴るし、65ΩのSRH1840も直挿しでいける。一方、250ΩのDT990PRO以上はアンプ推奨で、470ΩのR70xaはスマホ直挿しでは全く歯が立たない。ただしHD650は300Ωでも感度が103dBあるぶん、数字から想像するほど音量には困らない。
ちなみに手持ちのアンプとの相性では、HD650×FOSTEX HP-A8、DT990PRO×SPL Phonitor SEの組み合わせが特に良かった。

長時間聴くかどうか
長時間のリスニングなら、195gと圧倒的に軽いR70xaが有利。390gのX1はさすがに重く、DT990PROは音の刺激が強すぎて自分は30分が限度。逆に遮音性はR70xaが一番低く、背後のクーラーの音が気になるのはこいつだけだった。
機種別の短評
ATH-R70xa|空間表現力では唯一無二

SRH1840の二の舞を心配していたが、全くの杞憂だった。鋭利な中高音を低音がほどよく包み込んで、全体のまとまりを生んでいる。この低音は「空気感」と言い換えられる部分で、ライブ音源の空気感の再現はこれを超えるヘッドホンがちょっと思いつかない。
◎実測195gの軽さで長時間でも疲れない
◎ライブ・ホール録音の臨場感が別格
△470Ωでアンプ必須。遮音性は5機種で最も低い
向いている人:長時間リスニング、ライブ音源やクラシックを聴く人、アンプを持っている人

Sennheiser HD650|不動のリファレンス

エッジの効いた分解能より、曲としてのまとまりを楽しむタイプ。ボーカルラインが一番艶よく響き、ピアノ弾き語りの女性ボーカルを鳴らせば右に出るものはない。蕩ける。
◎ボーカルの艶とホール録音のうまさ
◎比較の基準になる定番機。中古でも値崩れしない
△低音の制動はトロめで、速いJ-POPやロックは苦手
向いている人:ジャズ、クラシック、アコースティック。これから1台目を買う人

OLLO AUDIO X1|音の階層が見える

解像度は立体的というより階層的。ボーカルにかかったエフェクトやリバーブが、別の「層」として肉声の上に重なっている様子がはっきり見える。散々聴いてきた曲でも再発見がある。いいおもちゃを手に入れた、という感想がしっくりくる。
◎音の重なり方まで分かる、唯一無二の解像感
◎32Ωでアンプなしでも鳴らせる
△390gと重い。ケーブルやヘッドバンドの質感は安っぽい
向いている人:音を分析的に聴きたい人、音楽制作をする人、アンプを持っていない人

SHURE SRH1840|モニターとしては完璧、だが

「どこで何が鳴っているか」の解像度は非常に高く、高音は刺さりが全くない。ただ、分離感が強すぎて曲として楽しむ没入感が生まれず、自分は手放した。用途のミスマッチで、モニター機としての完成度は今まで使った中でピカイチ。
◎楽器の距離感が整然と並ぶ、見通しの良さ
◎側圧が弱く快適。65Ωで直挿しもいける
△音の密度が薄く、ロックやPOPの鑑賞には不向き
向いている人:ミキシング・マスタリングで粗探しをする人

beyerdynamic DT990PRO|刺激の塊

ドンシャリで低音はズンズン、高音は劈く。この高音が良くも悪くも本機の全て。15年使ってもこの刺激は他で代わりがきかない。ベロアパッドは消耗品なので、潰れてきたら交換すると音も戻る。
◎5機種で最も手頃に買える開放型
◎短時間で気分が上がる刺激的な音
△高音がキツく、長時間のリスニングには向かない
向いている人:予算を抑えて開放型を試したい人、短時間で気分を上げたい人

よくある質問
開放型と密閉型はどっちがいい?
用途次第。音場の広さと聴き疲れのなさは開放型が有利だが、遮音性は無いに等しい。自室で一人のとき専用の道具だと思っておくのが正しい。ちなみに自分の生涯ベストは密閉型のDT770PROなので、開放型が上というわけでは全くない。
アンプは本当に必要?
32Ωや65Ωならなくても成立する。250Ω以上は必要。470Ωのモデルはアンプなしでは音量以前の問題で歯が立たない。
モニターヘッドホンは音楽鑑賞に向かない?
機種による。R70xaは音楽鑑賞にも十分向いていたが、SRH1840は分離感が強すぎて自分には合わなかった。「モニター」という括りより、ハウジング構造と低音の出方で判断したほうがいい。
5機種よりも手頃な、開放型の最初の一台を探しているならゼンハイザーHD599のレビューも参考にしてほしい。HD650との違いも実機で比較している。
まとめ|開放型に「上位互換」は存在しない
5台を並べて改めて思うのは、価格でも発売年でも順位はつかないということ。X1の階層的な鳴り方はR70xaには出せないし、R70xaの空気感はX1には出せない。
今の自分が日常で一番手を伸ばすのはATH-R70xa。ただ、これから1台目を買う人にはHD650を勧めておく。基準を持っていないと、次に買うものの良し悪しも判断できないからだ。そしてたぶん、1台では終わらない。おれがそうだったように。
密閉型が気になった人はこちらもどうぞ。





























































































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