リビングにオーディオを組もうと画策する多くの趣味人が考えるのが、テレビの音もこのスピーカーから出したらええやんけ、ということ。
自分もそう思って新居に65インチのテレビとトールボーイスピーカーを導入する際にHDMI入力のあるプリメインアンプを選んでeARCで繋いでしばらく運用もしてみた。

その結果として現在どうなっているかというと、普段のテレビ音声はテレビ内蔵スピーカーで聴いている。オーディオを通すのは映画か音楽番組のときだけ。4年以上あれこれ試した末の結論なので、理由も含めて書き残しておく。
先に結論から書いておくと…
・音質が解決しても、操作の手間が残る。テレビは1日に何度も触る機器なのでこれが効く
・家族全員が使うリビングでは、自分しか操作できないシステムは成立しない
・というわけで、アンプ側にHDMIはわざわざ必要ない。その予算は音質に回すほうがいい
テレビの音声が「聞こえにくい」問題
最初にぶつかるのがこれ。ニュースのアナウンスやバラエティのナレーション、ドラマの俳優の発声が、どういうわけか聞き取りにくくなる。
テレビ内蔵スピーカーは口径も筐体もろくに取れないので、低音も高音も出ない。その代わりに人の声の帯域を持ち上げて、セリフだけははっきり届くようにチューニングされている。各社とも音声明瞭化の処理を持っていて、これは薄型テレビのお家芸みたいなものだ。手持ちのBRAVIA A90Jに至っては画面そのものを振動させて音を出す構造なので、声が口元から聞こえてくる。定位まで合っている。

一方でHi-Fiスピーカーは、入ってきた信号をそのまま鳴らす。声を優遇する理由がない。加えて映画やドラマのセリフは本来センターチャンネルに置かれる音で、それを2chにダウンミックスすると左右に散る。ワイドレンジであることがむしろ裏目に出て効果音とBGMの中にナレーションが沈んでしまう。
実際、以前使っていたMarantz NR1200ではこれが顕著で、ニュースもドラマもバラエティも内蔵スピーカーのほうが明らかに聞き取りやすく映像体験としても上だった。10万円近い機材を通した結果、テレビ単体に負けるというのはなかなか堪える。
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現在のDENON PMA-900HNEに替えてからは、バラエティ番組のナレーションまでちゃんと聞こえるようになった。つまり「音楽用スピーカーでは声が聞こえない」と言い切るのは逸脱で、アンプの分離能力に相当依存する話でもある。NR1200がAVアンプ崩れの血筋ゆえに団子だった、というだけかも知れない。
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音質が解決しても、内蔵スピーカーに戻った
ただここからが本題で、確かに900HNEで音質面の不満は解消したが日常のテレビ視聴は内蔵スピーカーに戻っている。理由は音ではなく、操作の手間のほうにあった。
eARCでも、起動のたびに待たされる
HDMI接続なら全部自動で連動してくれる、というのは半分しか本当ではない。テレビの電源を入れてからアンプが認識してハンドシェイクが終わるまで数秒の間がある。その間は無音か、テレビ側から音が出ていて途中で切り替わる。一回なら気にならないが、毎日のオンオフの中で毎回出音までに数秒のラグがあるというのは想像以上にストレスだった。
音量の主導権がアンプ側にある
現在は光デジタル(Optical)での接続に切り替えている。900HNEには本体設定でテレビ起動時に自動的にOpticalでスタンバイから立ち上がるモードがあるので、電源に関しては困らない。
ただ、Opticalは音声データしか流れないので、音量操作はテレビ側から受け付けない。音量を変えたければアンプのリモコンを持つ必要がある。テレビのリモコンで音量ボタンを押しても何も起きない。
これがリビングでは致命的で、というのもリビングのテレビは妻も娘も触る。「このリモコンで音量、こっちのリモコンでチャンネル」という余分な機器操作を家族に強いるのは無理があるし、実際やってみると誰も使わなくなる。なった。
テレビは「操作頻度の高い機器」である
デスクのオーディオと比べると差がはっきりする。
| デスクのオーディオ | リビングのテレビ | |
|---|---|---|
| 使う人 | 自分だけ | 家族全員 |
| 起動の頻度 | 1日1〜2回 | 1日に何度も |
| 使うときの構え | 「聴くぞ」と決めて座る | ついでに点ける |
| 手間の許容度 | 高い | ほぼゼロ |
自室の机でJBL L52 ClassicとTEAC AI-303を鳴らすときは、電源を入れて入力を選ぶ手間がある種の「儀式」として成立するが、同じ手間をリビングのテレビに持ち込むとただの障害物になる。同じ数秒でも意味がまるで違う。
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だからアンプにHDMIは要らない
新築時に浮ついたテンションと金銭感覚でテレビとオーディオの接続を行ったが、結局のところ趣味の時間と生活の時間は分けて考えたほうがいいという結論に落ち着いた。正直音楽だけのことを考えてもトールボーイスピーカーは不要だった気すらしているが、それはまたいつか記事にしよう。

HDMI入力を持つプリメインアンプは選択肢が限られるし、その分だけ価格も上がる。同じ予算を素直に音質へ振ったほうがいいし、実際HDMIを持たないPMA-900HNEに替えたら音楽体験としてはかなり向上した。こんなもん最初から光ケーブル一本で十分やったやんけ…
実際の運用
現在の構成はこうなっている。
| 場面 | 音の出口 |
|---|---|
| ニュース・バラエティ・子ども番組 | テレビ内蔵スピーカー |
| 映画・ライブ映像・音楽番組 | Optical1に切り替えてKEF R900 |
| 音楽再生(Spotify) | スマホからSpotify Connectで直接900HNEへ |
光ケーブルは挿しっぱなしで、必要なときだけアンプ側で入力を選ぶ。ケーブル代は千円ちょっと。設定としてはテレビ側のデジタル音声出力をPCMにしておく必要があるので、そこだけ注意しておく。接続方法そのものは別記事にまとめてある。
そもそも音楽を聴くときはテレビの電源すら入れない。スマホのSpotifyからネットワーク経由で900HNEを選べば、それで鳴るので、リビングのオーディオはテレビの付属品ではなく独立したシステムとして動いている。この棲み分けに落ち着いてからは何の不満もなくなった。
それでも繋ぐ価値がある人
とはいえ全否定する気はないので、当てはまる人は挙げておく。
・観るものが映画中心で、腰を据えて再生ボタンを押すタイプの人
・一人暮らし、あるいは自分以外がテレビを操作しない環境
・テレビの音量は固定で使い、ほぼ弄らない人
・専用のシアタールームがある人
逆に「テレビの音が安っぽいから良くしたい」というだけの動機なら、おとなしくサウンドバーを買うほうがいい。あれはセンターチャンネルを持っていて、セリフを聴かせるために作られているのでちゃんと声まで聞き取れる。
せっかく良いスピーカーを揃えてピュアオーディオの牙城にテレビ音声を招き入れても、双方が少しずつ不幸になるだけだ。
まとめ
テレビという家族共用の情報機器に対して音質向上というおれの趣味性をぶち込んだのがそもそもの間違いだった。なにより最近の大画面テレビは一般的な番組視聴にはなんら不満のない音質を出してくれるので、分不相応なオーディオ嬉々はせめて自室で楽しもう。
















































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